唐突に、理解した。


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 お祖父様とおばあ様に連れられ、あちこちに挨拶回りと顔繋ぎの紹介とをしてもらって、数ヶ月間を忙しく過ごして――――


 その間に、『ネイサンが帰ってしまってから、スピカが毎日ネイサンを探して泣き暮らしている。ネイサンさえよければ、家に婿に来ないか?』と、トルナードさんから手紙が届いた。


 同時に、クロシェン家からお祖父様に、スピカとわたしの婚約の打診も。


 お祖父様からは、


「好きにしていい。自分で決めなさい。ネイト」


 と言われたので、『スピカがわたしを望んでくれるなら』と、返事を出した。


 わたしは、あれだけスピカを泣かせたくないと思っていた筈なのに……スピカが、わたしのことを忘れていなくて。それどころか、スピカがわたしを探し求めて泣いてくれていると聞いて……


 スピカが、わたしがいなくなってから毎日泣いてくれていると聞いたわたしは――――


 スピカに『ごめんね』と思っているのに。『泣かないで』と思っているのに。


 なのに、なのに、なのに――――


 酷いことに、とても……


 泣きたくなるくらいに……


 わたしは……


 嬉しく、なってしまった。


 クロシェン家での出来事を、スピカを思い出して寂しいと思っているのは、会いたいと思っているのは、わたしだけじゃないのだと。

 スピカも、わたしがいないことを寂しがって、探し求めて、泣いてくれるのだ、と。


 その様子を想像すると、可愛いスピカを泣かせたくなくて、でもスピカに泣いてほしくて、スピカにわたしを想ってほしくなって……


「泣かないで」


 そう言って今すぐスピカを抱っこして……

 その涙を拭ってあげたいのに、

 傍に行くこともできなくて、

 スピカの姿を見ることも、

 わたしを呼ぶ声に応えることも叶わなくて。


 いつも・・・みたいに――――


 『ねえさま、だいすきです』って甘えるような可愛い声で言ってほしくて、

 『ありがとう、わたしもスピカが大好きだよ』って言ってあげたくて、

 ぎゅっと飛び付いて抱き締めてほしくて、

 その柔らかい小さな身体を抱き締め返したくて、

 でも、それができないことに……


 スピカの傍にいられないことに――――


 胸が痛くなるような、切なくなるような、泣きたくなるような気分になって・・・


 いつの間にかわたしは、スピカのことがこんなにも大好きなのだと、自覚する。


 大好きで、

 とても大切で、

 抱き締めたくて、

 笑っていてほしくて、

 泣かないでほしいのに、

 自分の為に泣いてくれると、嬉しくなる――――

 可愛い可愛い女の子。


 あぁ、そうか。


 唐突に、理解した。


 わたしは……スピカが愛おしいんだ、と。


 そして、お祖父様が決めた。


 ネイサンとスピカ・クロシェンとの婚約は了承するが、ネイサンのクロシェン家への婿入りに関しては保留にする、とのこと。


 わたしは、スピカの婚約者となった。


 婿入りに関しては保留となったけど、お祖父様もおばあ様も、乳母も兄上も、わたしにおめでとうと言ってくれた。


 すごく、嬉しいっ……!!


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