メスガキ上書き

さて、目の前に垂れ下がっているのは残りの『茉莉』。それをたぐり寄せる度に上半身の男のままになっている部分と中に自分の足が入っていると思えど外見的には完璧に茉莉にされたすらっとした肌色も美しい可愛さ抜群の足とのアンバランスになっている。これだとバランスを崩して下にへばりそうで不安だがしっかりと足は床を支えている。


「大丈夫、私を完全に着たら私の身体に合わせられるから今は元の身体を覆ってるだけだよ」

「上を着て、顔まで着たら茉莉の身体になる……ということですよね?」

「ふふっ♪そういうの好きだったんですよね?」


垂れ下がる「モノ」に言われると顔は真っ赤に染まる。その照れ隠しをするかのように上を着始めると大きく垂れ下がるのは男には無い、二つのあれ。そうあれである。子供の身長に似つかわしくないそれは狐であることを意味するよう。そしてそこまでの距離は小さな身体故に、すぐに縮められた胴体に纏わり付く。


「ほごっ?!」


思わず出る男の声。肩は重くなり、ずしりと感じるその重み。男のままの身体になっているということはつまりその二つの重みを支えないといけないということ。そしてそれはもう外れないかのようにファスナーが上にひっぱられるときゅーっと胴体を包み込み、ぴっちりと身体を蒸らす。腕も通すと肩は可愛い形に変貌し、腕と手はもはや手というよりもおててと言うべき彼女の手、そのものへと変貌していた。可愛いこの手では最早ジャムの蓋さえ開けられないほどの力になってしまっているだろう。腕回りもびっちりと包みコミ、何処に自分がいるのかわからない。もうファスナーは上の首辺りまで上がっており、首より下は完全に茉莉。小さな女児の身体がまるで元の身体のように動かせるという違和感が無いところに不気味さを感じられる。それと同時に思う事は一つ、これは……理想の皮でしかないということ。


「私の身体になった気分はどう?でも男のままだとちょっと……ということで、顔までしっかり茉莉になってもらうけどねっ♡」


待ちきれない茉莉は顔を自分で奥へとかぶせると、茉莉の匂いがぶわっと顔一杯に広がり、視界が闇に飲まれるとともにきゅっと最後までファスナーが閉められた。その瞬間、密着力がさらにみっちりと強くなり、身体の筋肉が茉莉のものへと一時的に書き換えられていく。喉仏がぐいっと引っ込まされ、胸がその重みに慣れたかのようにすっと自分のものになり、尻尾の感覚と頭頂部の感覚が繋がったかのように生え、そして視界が開ける――そこに鏡に映っていたのは茉莉一人だった。


「茉莉さんになってる……?!」


口から出た言葉も茉莉の声、そのものだった。頭から同じ茉莉の声が聞こえる。意識は二つあるみたいだが、自分の意思以外で動くことは無い――つまり、茉莉は弄んでいる。僕に弄ばれる自分の身体を。


「(ふふーっ♡あとは自分の思うように過ごしてくれたら私は大丈夫だからね♪たーっぷり私になった欲望を食べられたら私は御馳走をいただけるから、何をするにしても、遠慮無く、ね!)」


……自分の思うように。となると……。どきどきと小さくなった心臓、尻尾はひくひくと動く藩王を見せる。それは過ちではないと思っても、やっぱり確かめたかった。身体のあちこちを触ると自分の身体にさらに身体がある――それは茉莉の皮。摘まもうと思えばぐいっと引っ張ることもできそうだが、今は茉莉が身体を覆っているような感じであり、自分と茉莉が同居しているとも言えるだろう。人は抓られたら痛い。なので神様にそのような暴力的なことができるわけがない。しかし彼女の意思が彼女の身体に宿っていない。自分の意思で動く神様の身体。密着して「今茉莉なんだよ……♡」と横にあるはずで今は無い横の耳に囁かれているという意識がぞくぞくと襲いかかる。それはまるで茉莉の腕に茉莉の腕が添えられているかのように。身体何処を触っても、後ろのファスナーが開かない限りは茉莉なのだ。


「あ、あ……あー……え、この後どうするの……?」


今まで居た茉莉ではない。しかし茉莉である。身体を合意の上に乗っ取っています。これは良いことなのか、そして茉莉は明らかに僕の欲を刺激するように何も言わない。何もしない。男の好奇心を擽る、そういうやつ。神様なのか、本当に。そういう事を考える度に身体から何かいらないものが吸い取られていき、皮がみちっと言いながら力をつけていく。こ、この……ならばと冷や汗をかきながら僕は茉莉の身体を存分に楽しむのであった……

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珈琲の実は朱くて甜い。 水守つばき @mitomoritsubaki

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