第7話 あなたが別れさせ屋など頼むからいけないのです
あれから数日、どうした事かラングレー商会から頻繁にお手紙が届くようになりまして。
商会からの新商品の後案内のお手紙というよりは、ラングレー会長の個人的なお手紙のように感じるのは気のせいなのでしょうか。
「ヴィオレット嬢、先日は貴重なお時間をいただきありがとうございました。貴女と商品について話す時間は何よりも有意義で癒される時間でした。また当店のスイーツをお買い求めになられる際には私がお邸までお持ちいたします。お礼に、貴女とお茶を楽しむ時間をいただけたら僥倖です。」
こんなお手紙を恥ずかしげもなくスラスラと書けて、あのような
フェルナンド様が別れさせ屋に依頼してから随分日が経ちましたが、一向にそれらしき人が現れていないところをみると……やはりラングレー会長が別れさせ屋だと考えて間違いがなさそうですわね。
その後ラングレー会長は私へ宛てて何度も手紙を送ってきたり、邸に会長自ら商品を持ち込んだりと暇さえあれば接触してくるようになりました。
その都度あの冷たい印象のお色味のお顔に、優しい笑顔を浮かべるのが反則並みに素敵なのです。
「世の皆様が別れさせ屋に別れさせられてしまうのが理解できますわ。」
それにしても、どうして時々胸が痛むのかしら?
フェルナンド様やお義母様、妹のモニクにひどいことを言われた時ですらこんなに悲しくなったりしなかったわ。
あのように相手を翻弄する言動をなさるラングレー会長にときめくのは、女性ならば必然なことでしょうけど。
「とはいえ、ラングレー会長は別れさせ屋。知ってて胸が苦しくなってしまうなどということはとても愚かなことですわね。」
ご父君であるブルレック辺境伯様の手前、私側の都合による婚約破棄をしたいからと別れさせ屋なるものを使ったフェルナンド様。
「フェルナンド様、あなたはこの婚約の重要さを理解していないとはいえ……それでも残酷な方ね。」
どうして私がラングレー会長やフェルナンド様の言動に振り回されてこんなに心を乱されないといけないのでしょう。
そのうち悲しさよりも、今まで感じたことのない静かな怒りの感情が浮かびくるのを自覚いたしました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます