第6話 まさに甘い甘いハニートラップですこと
――ところで、どうしてこのようなことになっているのでしょうか?
「ヴィオレット嬢、こちらは隣国から取り寄せたばかりの珍しいお菓子です。いかがですか?」
「どうもありがとうございます。とても美味しそうだこと。いただきますわ。」
私、本日は侍女と護衛騎士を伴って領内で話題の新しくできたスイーツ店へお菓子をいただきに参りましたの。
そうしましたら何故か先日お会いしたラングレー会長が店内にいらっしゃって、あれよあれよと言う間に奥の特別室へと案内されまして、目の前には色とりどりで豊富な種類のスイーツたちが並べられているところです。
「まさかこちらのお店がラングレー商会が始めたお店だったとは存じませんでした。」
「実は、ブラシュール伯爵家の御令嬢が無類のスイーツ好きとお聞きして、国内に数店舗出す予定だったものの一つをブラシュール領内に出すことにしたんですよ。」
「まあ、そうでしたの。私、スイーツには幼い頃から目が無くて……。今でも宝石やドレスよりもスイーツの方が何倍も私にとっては価値があると思っていますの。」
「この領地は他に比べても作物が豊かに実ることで有名な土地ですし、それによって材料費も抑えられますので。我が商会も大変助かっていますよ。」
このブラシュールの地は、気候が穏やかで様々な作物が豊かに実る土地として国内でも恵まれた領地なのです。
「どれも美味しそうで、見た目も大変美しいですわね。」
目の前に広がる様々なクッキー、サバラン、スフレ、カスタードプディング、ゼリー、マカロンなどはそれぞれ大変キラキラしくてそして麗しくて、中には見たこともないようなスイーツも並べられております。
「ヴィオレット嬢には美しいドレスや宝石をお見せするよりも、スイーツをプレゼントした方が貴女の心を惹きつけることができそうですね。」
あら、まさにラングレー会長の整ったお顔だからこそ許されるお言葉ですこと。
やはり、これは所謂甘い甘いハニートラップというものに違いありませんわ。
フェルナンド様に依頼されて、婚約者のいる私がラングレー会長と不貞を働くように仕向けているんですのね。
「なんて世渡りに長けていらっしゃるのかしら。(なんて卑怯なのかしら。)」
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