第24話 色恋沙汰は、さぁ大変
「すな~きちゃ…ごめん!帰る!」
布団で寝ている女の人に馬のりし、口を合わせている姿を見た私は、とび出して家に戻っていった。遠距離恋愛は続かないって言うけど、まさかすなが女の人を家に連れ込んで押し倒してる姿みるはめになるなんて…
私達籍入れてるんだよ。もう後悔したりしているのだろうか?そんなことを考えていると次兄がすなから電話だという。
「断って今はどんな言葉も聞きたくない」
「でるまで切らないと言ってるぞ!!」
私は降りていって兄貴から受話器をとりあげるとおもいっきしよく切ってしまった。
「向こうが切らなくてもこっちで切れば問題ないでしょうが」
「そりゃそうだが今朝いそいそでかけたのに戻ってから食事もしないで部屋に閉じこもって、そのうえ話も聞かないって夫婦喧嘩でもしてきたのか」
「きなが俺の仕事のことよくわかってないだけだよ。お兄さん。きな電話をかけるからちゃんとでて俺の話を聞け。ちゃんと説明するから」
幻聴視術という、すなから一方的にはなせる幻術だ様子は見れても意志の疎通はできないらしい。次兄がパクパクしているとその姿は消えた。
即電話はかかってきて私はいやいや受話器をあげた。
「今、ちょこっと話したけど、仕事の最中だったんだ。言霊っていってね。死んだ人間の意志を伝える。あの時俺は彼女の彼氏の魂を自分に降ろしていて。口移しで彼の意思を伝えてた。だから口はお互い大きく開いたまま触れ合ってたはずだ。
そーゆこともしているんだってことはきなにはショックだろうけどやましい気持ちは欠片も持たずに仕事に専念してる。俺に入り込んだ魂の主がどれほど望もうとその人を抱いたことはおろか口付けもしたことないよ」
「でも、唇には触れるんだ」
「ああ、うん、ごめん。意外と焼きもち焼きだね。きな」
私は再び乱暴に受話器を切った。恋人が否、旦那が他の人と唇合わせてて平気でいられると思う感覚のほうがどうかしている。
次の昼は昼間まで寝ていた。仕事は休みだったし『遠路』に出向く元気はなかった。そこへすなが飛び込んできた。
「きな、付き合え。俺んちまで行く。出雲李を待たせているから早く」
「何勝手なこと言ってるのよ。私は寝巻きみてわかんないの。昨日のことだってまだ引っかかってる」
「だから取り除きたくって出雲李に頼んだ。記憶の交換しよう。うそもまぎれもなく俺のしてきたこと見せる。きなのつらい思い出もみせて」
私はまゆをしかめる。思い出すのも嫌な記憶を見せろ。しかもすなの口付けシーンを何度見ることになるかも解らないじゃないか。すなは私の寝巻きを脱がしだした。
「ちょ、ちょっとすな」
「俺たちはそんなに暇じゃないんだ。無理してきてもらってる。急いで着替える」
私を着替えさせると抱えて走ってく。この馬鹿ちからを身長に回せ馬鹿!
「強引過ぎる。私まだ承諾してない」
「迷ってるの待ってたら夜になっちまうだろ」
「迷ってるんじゃない。嫌がってるの」
「じゃあ尚更だ。俺が他の女抱いて平気で見てられる?そんな術もあるんだぜ」
「術者の妻なら耐えろっていいたいの…」
「ある意味、そう言ってる。だから全部見せときたい」
すなの家の何もない大きな部屋の客室に出雲李が座っていた。長髪だからわかっただけだ。女と間違えるほど美しい。面長の顔は中心をわけて見事な黄金比率、全く対称で瞳は青色、まつげも眉毛も長く、一見華奢に見える体もそつなく筋肉を備え、何より手足の長さは細さは女のものより美しかった。
であった時は平安衣装に身を包み白化粧などしてるから想像もつかない美しさだ。
「こら、出雲李に見とれてる暇はない。覚悟を決めてくれ心を壊したくない」
「そんなに危険な術なの?」
それには出雲李が答えた。
「自分の心を支えるだけで人は精一杯だ。二人分背負えば負担は倍になる」
「私、覚悟なんてできないよ」
すなが熱い口付けをしてくる。感覚が麻痺してしまいそうなほど私が呆然となる激しい口付けだ。これをされると感覚がわからなくなる。私は唇を触り思考が止まってしまった。どうして、こいつこんなにキスが上手いんだろう…
「きなが壊れたら俺の責任だ。おれはそれでも壊れたきなを抱くだろう」
私はすなを見る。
「きなは退魔師の厳しさを知らない。魔なら時間が有るけど人間のきなには時間がないんだよ。それを一気に近づける俺のレベルへ」
私はこれ以上逆らえなかった。壊れても抱くというすなの覚悟に応えれる何かは今の私にはない。両手を互いの手ときっちり結び額をつける。出雲李が呪を唱えだすと流れてくるもの。それは記憶なんて優しい物じゃない。
すなの心、すなの体験、すなの痛いほどの拒絶と反抗の日々、親にまで捨てられて人として生きたいと叫び続けた幼少時代、暴走と挫折と出遅れた訓練、受け入れられぬ術もあった。すなはオールマイティだ。結界師なんかじゃない。ただ一番傷つかなくてすむ、きずつけなくてすむ結界師を選んでた。
お互いがお互いの体験を受け入れたとき、涙が溢れて止まらなかった。すなは最初から退魔師になりたかったんじゃない。内在する力ゆえに退魔師にならざらぬ得なかった。退魔師の自分を受け入れた両親。でも個人をすてた両親。その不信感は自ら両親との距離を置いていた。退魔師としてのみ関係を結んでるに過ぎない。
おじいちゃんがいてもすなは孤独だったんだ。この家に生まれ退魔師として生きるしかないと覚悟したときの絶望は死を選んだときの私の比じゃなかった。すなの目は閉じるのが難しく最初から私の過去をしって私に近づいた。
すなの作り上げた舞台上で私はすなを好きになっていってた。
「卑怯なやつ」
「なんとでも言ってくれ、それでもお前が欲しかった」
「すなの能力と力をもってどうこうすればだれからも卑怯と呼ばれるかもしれないけど俺はもっともすなに近い感覚をもってるんだ。だからこんな協力もするけど、もうわかるね。すなはだれも裏切らないよ」
出雲李がそう言った。出雲李もまた重い過去の元、退魔師をしてるのか。
「きな、今日はここに泊まりな。出雲李はどうする?」
「俺はこれからデートの時間。行くよ」
「出雲李君て彼女なんにんくらいいるんだろう?」
「失礼なこと言うなよ。出雲李は綺麗だが純粋だよ」
「でもないよ62人。先月半分に減らしたところだ」
そう言うと手を振ってでていった。
「あの馬鹿、今度逢ったら説教してやる」
「すなでもみえないものあるんだ」
「言ってたろ一番近いってあいつは隠すのが上手いんだよ、俺でも見えねぇ」
「で、結局蜘蛛の糸に引っかかった餌だよね私は。どこに惚れられたの」
「今日までの全部見たなら言う必要ないだろう」
すなは照れている。私は睨みつけていた。
「きな、怖い。まだ、許してくれない?」
私の表情が緩む。別のこと考えてただけ。
「私はすなが何してても信じるしかないんだね。唯一最高に愛されてると」
「てりゃーっ。いけーっ!!!」
結晶体を飛ばす私。仲間への防御も、鏡境結界もちゃんと張っている。水のお化けが崩れて海に沈んでいく。水に戻ったそんざいに巻き込まれて波止場に止められた
車類も持っていかれたが。
「全体的な能力が凄い突然に伸びたな。なにかあったか」
とないないさん。帰りながらかいつまんで話す。
「人間ってのは時々思い切ったことをするわよね。よく精神がもったもんだわ」
と呆れる桜さん
「その分すなの知識と退魔師としての覚悟みたいなものが生まれた感じ」
「あまり無理はするな。お前は人間だ。同じ人間でも陰陽みたいのは例外だ」
とあたまをぽんぽん叩くないないさん。
「うん。それ思い知った。だからできるかぎりすなの側にいたい。私にはそれだけしかできそうにないから。でも…すなに猛アタックかけてる子が一人居るのよね」
「へーあのチビでももてるのか」
あっさり言い切る炎火さん
「私もそう思ったけど…すなより小さくて頭よくてルックスもかわいくてボディラインも決まってて服装のセンスもいい…」
「見ちゃうとそんな余計なことまで見ちゃうのよね」
「だが頭いいなんて見てわかるのか?」
「すなのデーターというべきかな。すなは文系、彼女は理系」
「理系のが頭がいいとは鍵らんだろう」
「すなの行ってる大学は東京大学国立学校…」
『東大!』
「そりゃ理系の関門は滅茶苦茶高いな」
「それよりもきなに勉強教えてて首席逃してたというのによく受かったわね」
「すなは模試のが本番よりレベルが高いって」
「それにしたってきなが通ってた高校からは…」
「うん。始めてだって大騒ぎになってた」
「だろうな」
それからしばらく仕事と退魔が忙しくってすなのところへ行くひまがなかった。帰ってくると行ってたすなも帰ってこない。有に3ヶ月逢ってない。休みが取れた私は急ぎ荷物をまとめてすなの下宿先に足を運んだ。
「鍵がしまってる?」
開けてみるとパンツ一枚で裸の小さな彼女に組み敷かれているすながいた。彼女は私をみると笑ってすなと唇を重ねる。反応し返すすな。
「愛して須波君。恋人の多佳子よ」
「ああ、愛してるよ。きな」
そう言うと頭を抱え口付けをしようとする。
相手がだれだかわかってない?私は女に体当たりする。小さい彼女はころりと転がって受身をとった!?気にしてる余裕はない首を持ち上げて平手打ちの往復ビンタ。肩をゆすぶって私は叫んだ。
「すな!寝ぼけてないで他の女と私を間違えてるんじゃないわよ」
「きな…なんで…きな逃げろ早く!!」
「え?」
後ろから彼女が迫る。ぐいっと口をひらかされたと思ったらどろりとしたものが喉を通っていく。なにこれ気色悪い。そう思ったのは一瞬だった視界がわるくなり倒れた。
頬をそれこそビンタされ目が覚める。すなの声
「水を大量に飲むんだきな。早く今飲まされたものを全部吐き出せ!!」
「すなの声。水のまなきゃ…」
ふらふらと台所にいく
「きな!止めなさい。私の元に来るのよ。私が誰だかわかるわね?」
「すな…」
「…そうよ。すなよ。きなさい」
行かなきゃ。すなの元へ台所を離れようとする私の腰を捕まえて呪を唱えるその指が唇に触れると感覚がもっとおかしくなる。すながあっちにもこっちにもいるぶれて20人くらい居るように見える。そしたらまた腰をつかまれすなに連れ去られたすなの元へ。
「きないい子ね。すなと愛し合いなさい。深く深く愛してもらうのよ」
「すな…愛してる」
唇が上から触れようとする。とたんに恐怖がよみがえる
「いやー、離して、すなじゃない、この人は違う、すなじゃない、離して」
すながとんで来る。私を引き剥がして、男に股間蹴り、背の低いすなにはそれが楽なのだろう。…すな。これが本物。まだ一杯居る。腰をだかれ一気に台所までとぶ。
「おかしいな。俺が先に吐いちまったほーが早いな」
そういうと一人のすなはがばがば水を飲みだす。じーっとみてるともうひとりが言う。
「こっちに来なさい。きな!そいつは危険よ。私が本物早く!」
ふらふらとよせつけられる私何が正しいか解らないけど強制力がある。何故?
「いくな!戻るんだきなこ!!俺の側から離れるな。ごめんきなじゃ効力ないよな。お前の名前はきなこだ」
パーン!視界がはじけ飛ぶ。悶絶してる男一人。小さな女一人。そしてすなと私。
「きなさい!!きなこ。その男は危険よ。すなの姿をしてるけど違う」
「むだだ。強制力はこっちのが上だ。陰陽をなめるな」
そういうとまた水を飲みだす。吐き出たのは大きながまカエル。
「なに…それ?」
「お前の腹の中にもいるんだよ。早く吐き出せ。成体になる前に!!成体になったら強制力は逆転する。相手の言いなりになっちまう」
とにかく水を飲む。飲んで飲んで吐く。おたまじゃくしが数匹。すながまだだという。また飲んで飲んで吐く。また数匹。10回も吐いた頃には喉も痛い。胃液どころかみずしかでなくなって背中を叩かれまだ吐く。
「いなくなった。てめぇ、きなに致死量のませやがったな!!」
「だって恋敵なんて操るより居なくなった方が楽じゃない」
あいてがポケットからがまカエルを二匹出すと巨大化していく。
「ちっ、この格好じゃ印呪しかつかえない」
「わたしが倒す。結界お願い」
私は結晶をつくり始める。鏡境結界と4人に張られる結界。一気にがまカエルを突き刺しにかかる結晶。大量の結晶はがまカエルを破裂させた部屋中に散らばる泥のような液体。ジューと壁の解ける音。酸かい。こえーでも4人は無傷だ。
その間に浴衣を着ると刀を持ち出し切付けにかかるすな。慌てて首に抱きつく。
「駄目、相手は能力者でも人間。人殺しになっちゃう。それだけは駄目」
「だけどこいつはお前を殺そうとした!!」
「それでも駄目なの。すな、いろんな人が居る。でもどんなに泣いても殺しちゃいけない。魔とは違う人間相手の鉄則でしょう。すな…」
そして女と男を家から放り出した。
だが、女は懲りなかった。自分とすなのだきあっている写真を学びや中にばら撒いたのだ。一応婚姻受理届けをだしている私達二人と彼女が呼び出された。
「この写真の事実認めるのだね。君は婚姻をしていながら一生徒に手をだした」
「そんな証拠はないですよ先生それ失敗した写真」
しゃしんは真っ白だった。
「なぜ?…私は確かに無理やり茲一須波君に犯されたわ!!」
「無理やり?大家にでも証言とろうか?ひょこひょこ勝手に出入りしといて俺はきなに会いに行くタイミングまではずされたんだぞ」
「とにかく騒ぎになった写真が白くちゃ意味がない。後はいい歳なんだお互い分をわきまえて行動したまえ。特に茲一須波君、君は婚姻している。学校側としても異例の学生に入る。他の生徒に手を出すような真似だけはしてくれるな」
「わかってます。てか妻以外に正直興味のある女性は居ません」
「わたしもそれくらいでないと学生結婚などしないとはおもっているけどね」
外に出る玄関に向う。筒賀が待っている。
「希望通り全部真っ白にしてやったぜ」
「ありがとう筒賀、助かったよ」
「一週間も退魔サボって何してるのかと思ったらがま一族の女に操られてたとはな。油断にもほどがあるぜ。惚れられてたから既成事実で済んだんだ。敵に回してたら死んでたことになる。いくらなんでも気をつけろよ」
「全くだな。きな、ごめん。俺、他の女抱いた。その事実は消えない。どうしたら許してくれる?」
「愛して、誰よりも深く」
「うん。他には?」
「それだけでいい。彼女抱かれてたけど辛かったと思うから。すなはずっと私の名前呼びながらだいてたんだものね」
「確かに一理あるな。だからこそ写真までばら撒いたのかもな」
「だからって俺は許さんぞ。あのままだったら30分後には胃が破裂してたんだ」
「忘れちまえ、嫌なことは早くさー。で、とっとと退魔に復帰しろ」
「今日から復帰するよ」
「それは無理だろうきな、ほっとくのか、こんな写真目にさせたまま」
「あ、そっか。愛するよ。何よりもまず先に、今晩泊まれるね?」
私は真っ赤な顔でうつむいた。
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