第23話 陰陽師

私は連れられてすなの部屋に来た。元家じゃない。下宿先。

「置いてきてごめん。まさか魔がこんなに早く動き出すとは思ってなかったんだ。仮にもすでにギルドの一員だったし、魔に取り憑かれやすくなるのは通説だけど

現実味はなかった。特に人魔の場合」


「なんで最高ギルドが私を実験台にしていると?」

「人の動きだよ。最初は無視、懲罰、苛め、そして強姦エスカレートしてる魔が力をつけて来ている証拠。だけどお前は魔の意志をはなれて暴走しだした。そこまでギルドに10年も見つからなかったのに都合が良すぎる。


今度魔が同じレベルじゃなく強力化し、周りの基本反応が全く同じならほぼ間違いなくとは思ってた。ただどこかはわからなかったんだ。それは一角が教えてくれた。親が子を使って実験台にして何を企んでるんだ…」


「とりあえずどうしたらいい?」

「とりあえず今日はおれのものになってくれればいい。おまえにかけたあの術生存率五分五分なんだ。おれの覚悟を察してくれ」


そして私達は口付けから始まる。私に触れる手が微妙に震えている。もしかしたら術者のほうが何倍も苦しいのかもしれないと思った。



次の朝、起きるのは遅かったがすなは料理を作っている下着姿だ。いくら私が婚約者とはいえ服ぐらい着ろよ。でも食事はおいしくいただきました。着の身着のままで着てしまったが行くときに三着ほど私の服も一式持たせた。正解だったな。


「しかけるぞ。潰すことは出来ないだろうが、今後こんな真似はさせない約束くらいはとりつけてやる。決行は夕方になるがな。仲間を集めるから待っててくれ」

「それって仲間は大丈夫なの?上に逆らうのよ?」


「陰陽師に何年の歴史があると思ってる。現代の生き方に乗っ取って上の存在も認めて従いもしてきたがいざとなれば陰陽師は独立できる組織だ。向こうも強くはでれないはずだし、俺たちは簡単にはつぶれない」


夕方、集まったのは10名、皆平安の着物に白化粧をしている。私以外が全員だ。その状況でまずは

「両親だよ。父親に母親。父親は呪術全般を母親は結界を操る」

「よろしくお願いします。婚約者のきなこです」

「違うだろう。もう籍は入れたんだ妻でいいんだよきな」


私の顔が真っ赤になる。そっか、そうだよね。でもそう両親に紹介されるのは恥ずかしいものだ。そして初老の夫婦、九行の使い手らしい。

「それから筒賀、大無地、出雲李と俺の親友どいつもバランサーだけど攻撃、防御、治癒を得意としてるんで大きな仕事は四人でつるんでる。


そして武器女は神楽、見ての通り武器に呪を吹き込み武術で対抗する物理攻撃なら10人の中で最強だ。で司令塔、安倍貞治。名前を聞いての通り清明の直系陰陽師の跡取り息子。できることはというよりできないことはない人だよ


きな。必要上連れてはいくが術は使わないで姫に徹して、陰陽じゃない君の力は不協和音になりかねない。きなへの防御もおれがかけるから」

「わかった」


「同じ陰陽師から選べばこんな面倒なことはなかったのにしかも問題児に惚れてくれたものだな」

と神楽

「あー気にするな、こいつきなに惚れてたから嫌味も言いたくなるんだ。身長で諦めた口だよ」

と大無地。神楽さんの身長はおそらく180cm近い。


私は最高ギルドがどこにあるかも知らなかったが東京のど真ん中に合った。しかも皆見取り図まで頭に入っているらしく私を囲うように12名で駆け抜けていく。目的は中心部。他とはやりあう気もないらしく結界でみなやりすごしていく。


そして中央の扉を開けると同時に凄い攻撃が始まる。

こちらもみな呪を唱えてあったが向こうも迎え撃つ準備万端。しかし一角君を殺した雷さえもまるで受け付けない何重もの防御壁。相手の攻撃は一切受け付けないまま卒倒していく敵。はっきし言って相手じゃなかった。


「人魔を操ってなにをしてきた。ギルドに出没する人魔のほとんどはお前達が放ったものだな。そしてきなこに人魔を取り付かせたのも。他にどれくらいの実験体が居る。全てが壊れる前に開放してもらおうか」


「必要不可欠な犠牲だ。黙認してもらおう。その女だけは解放してやる」

容赦なく片腕を切り落としていく神楽さん。上がる悲鳴と苦痛。


「こっちは乗っ取ってもいいんだ。いずれ適任者を選出する。退魔師は闇の中に輝く一点の光だ。霞がかかってくれちゃ困るんだよ。安倍一族としてはね。今でも人の絶対的神話の上にたってるんだ」


「じゃあどうしろと?」


「人魔の操作をやめればいい。筒賀、言っててもはじまりそうにない。お前操作しろ。今居る人魔一つ残らず殺せ。取り憑かれてるのはこれから開放に向うよう誰かをだせ」


筒賀が指を鳴らすと4人が機械の前で操作を始める。すなの奴機械操作もできるのか。本当になんでもできるやつ。

「第一倉庫、人魔抹消」

「第二倉庫、人魔抹消」

…………次々と抹消され。102の倉庫の人魔が抹消された


「なんてことを、作り上げるのにどれほど苦労したかわかるか!世の中には必要な敵もいるんだ。どうやって金を稼ぐ、どうやってギルドに金を支払う!」

「その考えがそもそも間違えだ」

安倍が近寄り息を吹きかけるとずるりと倒れこんでいく。死んだようだ。


「ついでに真っ当な人間の選出もできるか、ここに居る人間はもう使いもんにならんだろう」

半分以上が肩をおとされずいぶんと時間がたっている。出血多量で死んでもおかしくない時間だ。他は脅えきっていた。容赦がない。私でも寒さを覚える。


その操作が終わり、新しいメンバーが集められる間、すなと私と出雲李だけ何もない部屋に連れて行かれすなが

「きな裸体になれ、おれができるのは応急処置までだ。最後の抹消に残ってる根を出雲李が焼ききる」


さすがにすな以外の男の子に裸をみられるのは嫌なんですが…この場合断れる状況にないんだろうな。体中に東洋針らしきものが刺されていく。有に1000本は越える針が刺されたと思う頭の天辺や顔指先や足先まで恥ずかしい部分にも刺された。


そして呪が唱えられる。電流が天辺から足の先に流れて落ちた。

「うああああぁぁぁっっっ!!!はぁはぁはぁはぁはぁ…死ぬかと思った」

「死ぬ奴も多いよ。茲一、針抜いてやれよ刺す時緊張しすぎてて痛かったはずだ」


「やっぱり他の男は怖いの」

「あたりまえじゃない。恥ずかしいし怖いしこんな姿なのよ」

「まぁ出雲李は女には興味ないがな。俺には猛アタックかけてた時期があるが」


私はその意味を考えた。

「えええええっ!そーゆ子なの。跡継ぎどーすんのよ」

「そーゆで悪かったな。跡継ぎなら妹が産むだろう」


「私は二回死んだことになるんだ。他の人は大丈夫なの?」

「正直解らん。お前だから無理して助けた。他のものにこれだけの苦痛を与えるのは正直酷だろう。そしたら首をはねる。全員はいきのこれないだろうな」


服を着ながら私は言った。

「陰陽の強さと怖さを知った。すなが自分の仕事のことをほとんどしゃべらないはずだわ。しゃべってたら私すなと付き合うのしりごみしてたかもしれない」


「ごめんな。知りもしないのにひどい世界に巻き込んで」

「どんなにしりごみしても、始めて口付けした日から私はすなから離れられなくなっていってた。結果はおなじだよ」



こうして一つの大きな事件が終わった。多数の犠牲者をだして。データーさんと卑弥呼さんが最高ギルドの管理職につくことになりギルドを離れた。実質四名になった『遠路』には適任者が配属される予定だった。ただ炎火さんの顔色はずっと悪い。

傷がいえるのにはしばらくかかりそうだった。


その頃、私といえば、治療の後遺症で体が燃えるように熱く。ベッドの上を転げまわっていた。最低限の食事と水とで後は苦痛に耐える日々。おちついて眠りについたのは二週間ほどたってからだった。すなが隣に布団を引いてねてたのも気付かないくらいだったのだから…面倒はすながみていてくれたらしい


二週間ほど様子を見て、リハビリしてやく一ヵ月後『桜と紅葉』に働きに出るようになり、すなも大学に戻り授業を受け始めた。退魔の仕事が少なくなり、普通の仕事に専念しなければならなくなったことは言うまでもない。


それでも闇に住まう魔が消えたわけじゃない。


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