第22話 誰の仕業?

次の夜、再びみんな集まった。今度は一角君もいた。手に妖刀を『鈴獲』をもって。本気モード全開の証である。あれは本家にあると聞いた。昨日は取りに行っていたのかもしれない。そして一角君はとんでもない事を言った。


「生きた根に張られたものは何度でも根を張られる。きなはもう駄目だ殺すしか助ける方法がない」

そう言うと一角の姿になる。向ってくる一角君。魔が何かしようとするのを結界で封じる。


「何を考えてる。君を助けられるのは俺たち魔だけだ」

言葉を無視して結界を張る。まともに一角を受け止める結界。いつまで持つか自分の手でも一角を押し返すよう力を込めるが力が違いすぎる。


みんな一角君の言葉に迷ってるのか動かない。その中を一筋の光が走って一角をばっさりと断ち切った。これは結界の応用?

「またせたな、きな。もう大丈夫だ。何が何でも助ける」

一角を切られた一角君は人の姿に戻り、冷たい声で言う。


「例え根をどうにかできたとしても、また張られる。そいつは殺すしかない」

「ふりかざす妖刀の前に飛び出て片手で妖刀を捕えたのは炎火さんだ。

「一角、落ち着け。きなはもう仲間だ。簡単に捨てるな」

「捨てるしかないんだよ!それが最高ギぃうぎゃあああああっ!!!!」


一角君がとてつもなく大きな雷に打たれる。魔の雷だ。ならば命が危ない。

「すな!治癒」

そう言ってわたしもかける。だがすなは動かない。

「すな!」


私の手をとめたのはないないさんだった。

「治癒じゃ無理だきな。もう死んでる」

みんなの顔を見回す。誰もがうなずく。炎火さんがうなずいた後泣き始めた。


「根をとらないことには魔は何度でもとりつく。しかも生きた根はほおってはおけない。きな、死ぬより辛い思いをしてもらうぞ。もしかしたらショック死するかもしれない。だけど信じて受けろ。体内結界通過を行う」


すなの手が胸にめり込む。血はでない。スブスブスブと心臓に向ってめり込んでいく。心臓を握られたかと思うとそれもズブリとめり込んで指が邪魔して心臓が悲鳴をあげる。その前にこれは痛みじゃない苦しみじゃない恐怖でもない。でも息ができない。悲鳴もあげれない。涙さへながせない。普通では言い表せない感触。


肉を直接犯されている。心臓の中心にあったこぶを握り締めるとすなは一気に引き抜いた。立って後ろに下がるごとに根がもぎ取られ肉を通り過ぎて行く。完全に取り除いたとき魔が苦しみのた打ち回りだした。


そして私も言葉にならない言葉を発する。体全体の痙攣を感じながら

「ああ、ああ、あ…」

と意味にならない言葉を発しながら少しずつ波が沈んでいくのをただ人形のようにやりすごした。


魔はすなの持つ刀で一薙ぎすると断末魔の声を上げて消えていった

しばらく、みんな、呆然としていた。

「どうする?ギルドを抜けるか?」

「え?」


私が落ち着いた頃に発せられたすなのことばに呆けた返事をした私。

「犠牲者は一角だけで充分だろう。一角の言葉が本当ならお前を庇う限り上を敵に回すことになる。俺はその覚悟お前のためならできるが…全員は無理だ」


「でも、今の術は生きたまま生きた根を引き抜いた。もう間に取り付かれる心配はないんじゃないの?」

とさくらさんがいう。

「ああ、その為に過酷な事を今きなにしてみせた」


「なら、ギルドを抜ける必要までは…」

「なら、何故、上が彼女に魔が取り付いてることを知ってるのかしら?」

「全くだな」

卑弥呼さんとデーターさん。桜さんがまさかという顔でみる。


「おそらくそのまさかだよ。餓鬼の頃に取り憑かれたのも人魔、そして今回パワーアップした人魔。わざわざ同じ状況の交通事故までお膳立てしてね。おそらく実験体だ。だから処分しろと言った。知られるのはまずいから。一角が死んだのは命令されたときにやはり印をつけられて盗聴されてたと見るのが自然だろう」


すなは恐ろしいことを冷静に言ってくれる。実験体。私が?ならばこの先の未来は?私は生きてていいの?

「きな、未来に不安を持つなは無理だろうが死ぬことは考えるな。生かす為に俺はお前を助けたんだ。かなり無理はしたが」


「今は受け入れられないわけか…形がついたら戻ってきなさい。『桜と紅葉』には連絡入れとくから」

私はただうなづいた。どんな形であれ片付けるこの問題を


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