第20話 新生活
役所にて籍を入れて口付けをする。周りが見ているのがわかる。少し抵抗してみせるのだが凄い力で抑え込まれる。なんでこいつ背は伸びないくせに力ばっかり強くなるんだ。茲一家の呪いもあながち嘘じゃないのかもしれない。
口付けは終わらない。終わらせ方は知っている。私もすなを求めることだ。顔を真っ赤にしながらすなに応える。激しい口付けになっていくのがわかる。そしてやっと口付けが終わる。わたしはすなに弱い。いつでも思い通りにされてしまう。
「いよいよ。大学かぁ。引越し大変だぁ」
「その必要はない。お前は残れ。こっちに」
「なんで!私大学も専攻せずに、すなの側にいるために家もでる準備してたのに」
「よく考えたら、引越ししたら臨時でもギルドを変わらなきゃならない。お前は一度魔に取り付かれてる環境の変化は魔に取り付かれやすいんだ。ここなら桜さんたちがいるけど他のギルドならお前の精神を破壊して魔を取り除きかねない」
「そんなー、まだ魔に取り付かれるかもなの。てか、すなのいない四年間なんて考えられないよ」
「二時間ほどだし、出来る限り帰って来るよ。俺もきなのこと欲しいし」
ぼっと赤くなる顔、怒りながら
「動機が不純すぎ。もっと真面目に愛してよね」
「真面目だろ。他の女には興味ないし。お前のこと考えて別居しよう言ってるの」
「せっかく一緒に堂々と今度は暮らせると思ったのに」
「昨日までおれもその状態だったよ。夢に見ちまったんだお前の両親死ぬとこ」
「私の?見たこともないのに?」
「占夢だよ。何かが起きる予兆。お前のことだからお前に起きる」
私は背筋が寒くなった。同じことが繰り返される?震える私。すなに肩を抱かれて
「大丈夫、最悪は何が何でも避ける。おかしいと思ったらさくらさんのとこ行け、それで駄目なら俺がとんで帰る」
こうして私は家に残ることになり、すなは大学にいき、長兄も二人暮らしを始めた。
「言っとくが俺は兄ほど甘くない。茶ぐらい自分で用意しろ」
「はーい。次兄らしいわ」
「なんだと?」
「なんでもありませーん」
そう言って麦茶をつぐと自室に行った。
昼間から自室でやることもなしにボーっとしていると不毛に思ってくる。バイトを探そう!!さっそく『遠路』に向った。
「ギルドの仕事をしながらできるバイトねぇ」
「だって魔が出るたびに休んでたら首でしょう?」
「違いないだろうね」
「児童施設『桜に紅葉』に聞いてみてあげようか?あそこは年中人手不足だし」
「本当?お願いします」
「えっと、花餅きなこです。きなって呼んでください。一生懸命頑張りますのでよろしくおねがいします」
パチパチパチと拍手。
「若い戦力は貴重だから嬉しいわ~」
と桜さん
「そうよねぇ~」
と紅葉さん
全く同じ顔をしている色彩が違うだけ。能力も属性が違うだけで同じらしい。全く同じ日に全く同じ場所に植えられ同じように愛情をかけられた木はいつか双子の魔に育ったらしい。
仕事は楽なものじゃなかった。珍しい私を独り占めしようとするもの。弱い子をいたずらしては泣かしてケラケラ笑う子。どこかに雲隠れしてしまい大騒ぎで探し回ったり…他人の子を預かるって難しい…。
なかばすなとの間に子供が出来ればこんな子達と変わらない子を育てなければならないのだと開き直ってビシバシ叩いてひっぱってきて遊ばせる。泣けば抱きしめて
泣き止むまでなだめ黙りこくったら喋るまで根気比べだ。
「ちょっと乱暴だけど筋はわるくないとおもいますの~」
「元気でよろしいのではないかと~」
「じゃあ採用ですか?」
『ですの~』
どうでもいいが間延びした語尾はどーにかならんのか園長と副園長。
とりあえず採用はしてもらったものの私が出勤するのは1ヶ月もあとになる。
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