第11話 まがまがしい木

「すな、敵の気配。ちょっと行って来る」

「俺も行こうか」

と心配そうな顔。だけどすなはギルドの人間じゃない。情報は伝わらないし、ただ働きだ。

「すなはギルド面子じゃないでしょ。大人しく勉強してていいよ。そんなに大物じゃない」

「わるいな陰陽はそこだけで独自ギルドを結成してるから抜けるわけにもいかないんだ」

私は親指を立て部屋をでていった。



魔はどこにでもいる。霊もどこにでもいる。力が弱い間はそれを探すのが大変なだけで何気なく人の横に建ってたり、そーっと取り付いてたりする。でも一定の負の力を得ると急激に力をまし姿を現す。そこまできても普通の人は気付かない。だけど私たちは気付く。ギルドには管轄がある。自分たちの管轄で生まれた魔は出来る限り逃がさないように自分達で狩らなくてはならない。その中で逃げ延び成長し自我を持ち人と混じって生きている魔が桜さんたちだ。奇跡のような確立でかれらは人側につく魔となっているのである。それを考えると無闇に狩ってしまうのは悲しい気もするが魔の栄養分は基本的に負。存在するだけであたりを不穏な状態に導くのである。私が10年その力を吸われ続けていたみたいに…


結界に入った。みんなの気配を追うと1本の木を取り囲んでいる。

「みんなー」

「おーきな思ったより早かったな、結界変われやー」

ないないさんの言葉に印を結んで結界を代わる。

「魔ってこの木なの?昼間までなんともなかったのに…」

「それでもきなちゃんもこの子から感じ取っているでしょう魔の力を」

桜さんが言う。確かに感じ取った気配はこの木のものだ。


「30分ほど前、この気にスクールバスが衝突して大破。中にいた全員が打ち身などにより死亡。生存者0だ」

データーさんがいう。一角君が日本刀片手に

「それなら今頃ここらは大騒ぎのはずなのに人っ子一人いないな。こいつが散らしたな」

「散らしただけでなくバスを引き寄せたのもこいつだろうさ」

厳しい顔で炎火さんが言う。そして続きざまに

「とりあえず殺す」

いきなり空気の温度が変わる。あわてて離れる他全員。火の粉がかからないようにもう一つ結界をそれぞれにかける私。ドーナツ状の結界が張られる。一応、そこまで確認してからさらに温度をあげているのだろう炎火さん。

木を被いこむように小さな火が無数に生まれた。


「始めてみるね」

ぼそりという私。桜さんが

「炎火さんの基本中の基本の攻撃。強力すぎるのと私の弱点なので始めてみるのかな」

「桜さんの弱点?!」

「だって桜の木も木だもの火は天敵よ」

そういうとにっこり笑った。炎が降り注ぐ。木は燃えてない。普通には人間の目を力の目にずらす。黒い黒い木が燃え盛り悲鳴をあげてるのがわかる。ああ、ここは直進なのに事故が多かったのはこいつが負を食らっていたからなのか…ほどなくして火は燃え尽きた。力の目を人の目に戻す。


私が人の目を使えるようになったのは最近だ。すなが教えてくれるのは勉強ばかりではない。ずっと人じゃないものを見続けた私の眼は最近それを写さなくなった。人としての視界がみえる。そして人がどんなに無防備なのかを知ったのである。見えなければ当然理解できない世界だよな。でも兄貴たちは理解しようと頑張ってくれている。ありがたいと思わなくっちゃな。


「これで終わり?現物の木はほっといても大丈夫?」

「いや一度負をとりこんだものは負に取り付かれやすい。処分しとくにこしたことはない」

そう言うと一角君は木の幹をばっさりと切り落とした。ずずずっと道端に倒れる木。倒れたのをみてから

「これの処分も俺達の義務?」

と一角君。ため息をついて炎火さんが手をほいほいと一角君にふる。結界に戻れということなのだろう。一角君が結界に戻ると炎火さんが木に触れる。ホボッと木を炎が包む。術じゃない炎火さんそのものだ。マグマさへ感じさせる炎それが炎火さんの正体。だから人の姿をとってもどこまでも赤いサングラスとジャンバーが欠かせない訳だ。木は跡形も消え、道路が墨でもふりかけたように黒くなっている。人型になると

「終わりだ帰るぞ」喫茶『遠路』に向って皆で帰った。


戦闘するための結界と炎から守る為の結界、ふたつはって7万円。初心者見習いの私には大金だ。そのことをわかっててらいらいさんは私に結界を変われと言ったのだろう。ありがたい師匠である。お金を貰うといそいで帰る。もうすなは帰っているだろうけど宿題がだされている。きっと。


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