第2話 かけっこ
どうしよう。仕事始めたとたんに難関だよ。付いて来る?はた迷惑もいいところなんですがぁ。私はどうしたらいいかといきなり悩む羽目になった。授業が終わるとさっさと片付ける。走って玄関に向おうとする私をすなは目ざとく見つけて私の教室に行こうとしてたのをUターンしてくる。
「そんなに急いでどこ行くんだよ」
「私の勝ってでしょう」
下駄箱で靴を履き替えるとまた走り出す。ちっ、向こうも運動靴か。まぁいい振り切ってやる。
私は目的地まで走り続けるつもりだった。途中長い坂があってそこを登りきるのは大変なんだが高校に入った私の新生活を邪魔されてなるものか…冗談じゃない、きっちり付いて来る学年トップとくれば頭でっかちと決め付けていた私は呆れると同時に不覚にも一瞬感動を感じた。坂を登りきったところで立ち止まり息を切っていたのは私のほうだった。なんかすごく悔しいのに
「急ぐなら荷物もってやるから無理して走るな。きなこ、こんな坂女の子には心臓破りだぜ」
まだ、余裕の顔さへ見せるすなを見て振り切るのを私は諦め、目的地にむかうのだった。
「きなこは嫌。気にしてるの。きなって呼んで」
「了解」
すなはまるで太陽のように笑った。おもわずドキリとする。すなは小さくてそれに比例しているのかどこか幼い顔立ちだったが白い肌に天然の茶髪(羨ましい)をむぞうさに伸ばしていて、なんか髪に統率感がないというか、おそらくこれは自分で自分の髪を切っているんじゃなかろうか?肩先まで伸びた髪はさわさわと自由に泳いでいた。でも幼い顔立ちは大人の顔をみせる。それは先ほど坂を登り切った時に見せられている。荷物を持ってやるからといった彼の顔はまるで幼子の我侭を聞く歳の放れた兄のような顔だった。
それからちょっと歩くと繁華街だ。いきなり人が多くなる。しばらく歩き裏路地に入ると私の目的地喫茶&バー『遠路』があった。
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