第9話 困ったちゃん養育後の私の決断
私は店長に通告した。
「私は、三人の困った女性を養育したつもりでしたが、結局は育成は不可能でした。でも私のできる範囲内で、やるべきことはやってきたつもりです」
店長は軽い溜息をついた。
「人を育成できるなんて、家族でもできることではない。ましてや他人の言うことを聞くとは思えない。
あんたは、そういった人を理解しようと努力しただけでも、今の世の中、救いが生まれるよ」
克子は休学中の定時制高校に戻ったが、呉田は退店後行方知らず、咲子は東京の彼氏のところに旅立った。
私はこの三人に出会ったおかげで、人間の幅が広くなった。
世の中には、理解不能な人がいるが、そういった人を一方的に悪者扱いするところから、悲劇や犯罪が生まれるのではないだろうか。
日本は、和の社会であるが、昨今のグローバル化により、アメリカ並みに個の社会
になりつつある。
いろんな人を見て、その人の心情を理解することは大切だろう。
因果応報というが、やはり人を傷つければ自分もやはり傷つけられるときが訪れる。自分はフツーなどと思っていても、人から見たらそうでなかったり、また環境や時代が変われば、フツーだと信じていた常識などいとも簡単に変化する。
人は愛想の良さに魅かれ、自分にとって都合のいい人を善人だと勘違いするが、果たしてそうだろうか?
詐欺師は全員、そのパターンである。
しかし、詐欺師は相手を観察し、相手の立場に徹底的に合わせるので、不思議と恨まれやしないが、全財産を取られたあげく、借金まで背負わされた悲劇も存在する。
まさに、表面は悪者を懲らしめる正義の味方のような白いマントの仮面を被り、内側には黒い悪意を秘めた灰色の男である。
むしろ、身内でも厳しい忠告をする人の方が「自分とは合わない口うるさい奴」と逆恨みされるケースさえある。
しかし、世の中の矛盾のスパイラルは、誰かが切ることをスタートしなければ、ますます矛盾だらけになり、憎しみ、恨みの心の傷を秘めた灰色の男は増えるばかりである。
もしかして、これは神の御心ではないだろうか?
なにかを産みだすには苦しみが伴うが、それにより、新しい自分が新生する。
そして私には、神のチャンスが与えられたのではないだろうか?
神様、いるなら困ったちゃんを救ってあげて下さい。
そして、内側には、憎しみ恨みのどす黒い悪意を秘めながらも、表面は正義の味方の白いマントの仮面を被った灰色の男がこれ以上、増えることがありませんように。
神様ヘルプ アーメン
END(完結)
☆ ポンコツバイト女性養育中 すどう零 @kisamatuma
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