狩人たち
ぺらねこ(゚、 。 7ノ
起
地球人類が宇宙に播種してから、すでに数え切れない年月が経っていた。いくつかの異星人や、すでに滅んだ文明などにもアクセスしており、概ね良好な関係を築き、大きな争いは生まれなかった。
と、される。
だが、実際には星に脅威をもたらすほどの災厄に運良く巡り合わなかったに過ぎない。そして、そのめぐり合わせは、偶然発生する。とても低い確率だが、人間は
獣は目を覚ました。はるか昔、星に喰いあき、太陽を飲み飽き、腹がくちくなって眠ったのだ。目が覚めた獣は、飢えを感じていた。地球ほどの大きさの目玉を軽く閉じ、太陽よりも大きく熱く赤い口を開けると大きなあくびをした。
真空中にそれを伝えるものは皆無だったが、重力波計とスペクトラムアナライザーは地球圏の外縁部で大きな波が起きたことを記録した。
絶対零度の宇宙空間、月ほどの熱交換器とともに設置された量子コンピュータ群に全ての情報が渡され、解析が行われた。排熱剤として彗星をいくつか溶かし尽くして得られた予測は、獣が存在すること、そしていずれは捕食行動に出ることだった。
すぐさま、観測衛星が8基建造され、光学的、電子的、霊的な観測器を積んで、獣と大きく距離を取って配置された。FTL《超光速》通信で量子コンピュータ群にデータの転送が始まると、その姿がおぼろげに浮かび上がってきた。
宇宙空間に耐えられる外皮。中には生物的な熱源。おそらくは恒温動物。規格外のサイズ。排泄物の無さから、その餌食は核融合によってエネルギーに変換されているであろうこと。鼓動は確認されており、いつ動き出しても不思議ではないことが告げられた。
首脳部は揺れた。
体内で核融合を起こし、それでも生存し続ける生き物が核兵器で殺せるのか? 期待はできなかった。どれだけの火力を注げばダメージを与えられるのかはかりきれず、しかし汎人類のもつ最高のダメージソースが核兵器であり、仕方なく用意する事となる。一撃なら加えられるかもしれない。だが、それで獣を倒しきれなかったとき、どのような反撃を受けるかわからない。
首脳部が次に行ったのは、神話や伝承の洗い出しだった。これほど巨大な獣であれば、すでに知的生命体と遭遇している可能性がある。すぐに解析がはじまり、各地の神話伝承は驚くべき速度で系統立てられ、整理されていった。たびたび冷却剤を追加しながらの解析は、莫大な費用を掛けて継続されたが、成果と呼べるものは生まれなかった。
数ヶ月が経ったころ、獣は僅かに動き始めた。
首脳部は素早く作戦を立案した。小規模の上陸部隊を獣に接岸させ、体表面のサンプルを手に入れる。というものだった。
サンプルは採取と同時に解析され、獣を倒す手がかりとなる。もし、解析が終わらぬうちに獣が動き出せば、最大限に増産された核攻撃を行う手順であった。
上陸部隊に選ばれたのは、首脳部の推薦を受けた1名と、教会から推挙された2名、合わせて3名だ。
キャプテンとされた地球人は、首脳部の中でも、
そして、もうふたり。汎銀河一神教教会から、黒いローブをまとった東洋系の若い地球人がひとり。この者もまた、
そして、同じローブをまとった少女。いくつかの種族の血が混じり、バロック様式を思い起こさせるような危険なバランスで、得も言われぬ美しさを感じさせる。教会が推挙したという事実だけが彼女にはあり、他のふたりの持つ実績には及ばぬことが明白であるが故に、彼女こそが切り札なのだと人々は納得した。
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