水底の勇気 (短文詩作)

春嵐

水底の勇気

 自分の彼女と、自分の友達の恋人。海岸線。遊んでいる。


「この海岸」


 言おうとして、少しだけ、ためらう。とても確率は低いけど、当該者の可能性がある。


「なんだよ。話せよ」


 友達。大きな指輪をしている。左手の、薬指。


「この海岸の下には、爆発物が埋まっていた」


「へえ」


「それも、地球まるごと吹っ飛ばせるようなやつが」


「地球まるごと、か」


 現行の兵器では、地表をなんとか破壊できる程度。地球を真っ二つにできるほどのものは、この科学進歩では100年以上経っても開発されない。

 しかし、この海岸の、下には。それがある。人の手によって作られたのではない、爆発物が。


「気にすんなよ、あんまり」


「どういう意味だ」


 知っているような口調。


「明日空が落ちてくるわけでもあるまいし」


 友達の恋人が、こちらに走ってくる。大きめの魚を取ってきたらしい。


「獲った」


「すげえな」


「よし、ごはんにしようか」


 自分の彼女が、慣れた手つきで魚をさばきはじめる。軽く確認したけど、何も危険なものはなかった。ただ美味しそうなだけの、大きな魚。


「な?」


 彼と、彼の恋人が。

 やはり、この海岸の守りびとだったのだろうか。

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水底の勇気 (短文詩作) 春嵐 @aiot3110

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