ジークベルト邸強襲
……………………
──ジークベルト邸強襲
航空偵察の結果は航空偵察の結果を分析した戦略諜報省からフェリクスへ渡されると同時に、アロイスにも渡されていた。
ふたりに同時に届いた航空偵察の結果は、それぞれに異なる反応を与えた。
「ヴァルター提督。この場所の電話を盗聴できますか?」
「やってみよう」
住所から電話番号が割り出され、電話の盗聴が始まる。
電話の盗聴内容は全て海兵隊員によって記録され、レポートとして録音テープとともにフェリクスとヴィルヘルムに渡される。彼らはそれを見て、ジークベルトの居場所を探し出そうとしていた。
「ジークベルトからの電話が2件。同じ番号からです。内容は先の傭兵たちとの戦闘に対する問い合わせですね」
「電話番号から住所を割り出そう。これでジークベルトの居場所が分かるな」
「ええ。なんとしても奴を“国民連合”ではなく“連邦”の刑務所に」
「分かっている。すぐに行動に入ろう」
ヴァルター提督は電話番号から住所を割り出させる。
「提督」
「どうした?」
「電話が途中で途切れました。こちらの盗聴に気づかれた可能性があります」
「不味いな……」
盗聴が知れたということは別の電話でジークベルトに警告が行く可能性があった。
「すぐにフェリクス・ファウスト特別捜査官たちをヘリに! ジークベルトの居場所を強襲する! 海兵も2個小隊を動員! ヘリボーンだ!」
ヴィルヘルムはそう命令を下し、海兵隊員たちが、ヘリに乗り込んでいく。
「ヴァルター提督! 住所は!?」
「割り出せている! こちらで出来る可能な限りの援護は行う! 幸運を!」
「ありがとうございます!」
フェリクスたちはヘリに乗り込み、ただちにジークベルトの居場所に向かう。
迅速さが重要だ。ジークベルトを警察や陸軍、そしてヴォルフ・カルテルに渡してはならない。ジークベルトの身柄はフェリクスたちが確保する必要がある。
そして、何よりジークベルトに逃げられないように。
『まもなく降下地点』
ガンシップが援護する中、フェリクスたちを乗せた輸送ヘリが着陸準備に入る。
『不味い! 対空ミサイルだ! ロックオンされている!』
『振り切れ、振り切れ!』
慌ただしくヘリが加速し、フェリクスたちは機内で振り回される。
『テールローターに被弾! 墜落する!』
『墜落に備えろ!』
墜落に備えると言っても中にいる人間にできることは限られている。
衝撃に備えた姿勢を取り、後は祈るだけだ。
そして、ヘリが地面に衝突する。
「生きてるか!」
「生きてる! パイロットは!?」
「無事だ! 脱出させる!」
ベルトをコンバットナイフで切断し、フェリクスたちはパイロットたちを機体から脱出させると、目標であるジークベルト邸を見る。ジークベルト邸では既に後から降下した海兵隊員とガンシップがシュヴァルツ・カルテルの兵士と交戦していた。
「ツヴァイヘンダー、ツヴァイヘンダー。ダストオフを要請。ヒポグリフ・ゼロ・ワンが墜落し、負傷者複数。繰り返す──」
墜落したヘリの海兵隊員は救急ヘリを要請している。
「無事なのは?」
「10名。すぐに動けます」
「なら、乗り込もう」
フェリクスたちは動き始める。
ジークベルト邸を目指して前進し、銃火の中にある味方と合流する。
「状況は?」
「敵はここに要塞を作っているみたいです。陣地が作られ相当な数の敵がいます。見える範囲の敵はガンシップが排除していますが、また対空ミサイルが飛んでくるかもしれないと考えると、あまりガンシップに頼りすぎない方がいいですね」
「了解。では、邸宅内に突入できるか?」
「ええ。いけますよ」
「指揮は任せる。導いてくれ」
「了解」
海兵隊の指揮官はスモークグレネードを投げるように指示を出すと、一斉にスモークグレネードが展開される。そして、フェリクスたちはその中を駆け抜けて、ジークベルト邸に突入していく。
「行け、行け、行け!」
ドアを爆破し、正面玄関から海兵隊は突入する。
「畜生。吹き抜け構造だ」
「上も警戒しろ! 1階ずつクリアにしていくぞ!」
海兵隊員たちは訓練された素早い動きで、ジークベルト邸の室内を掃討していく。
魔導式短機関銃や魔導式自動小銃で抵抗してくるシュヴァルツ・カルテルの兵士を叩き、時折ガンシップに援護を要請する。赤のスモークグレネードが投擲されたら、そこに向けて外からガンシップがガトリングガンで打撃を与える。
「クリア!」
「クリア!」
室内を掃討した海兵隊員たちが号令を送る。
「この階層はクリアです。ジークベルトは?」
「いない。地下はあるのか?」
「ありますが、状況を考えるに上の敵も掃討した方がよさそうですね」
「分かった。指揮官は君だ。君の指示に従おう」
「助かります」
海兵隊員とシュヴァルツ・カルテルの兵士たちのげ貴賤は続いた。
シュヴァルツ・カルテルの兵士たちは手榴弾を大量に使用し、フェリクスたちはそのたびに心臓が止まりそうになった。
だが、練度は海兵隊員の方が遥かに上だ。
的確な射撃で敵を無力化し、確実にひと部屋ずつ制圧していく。
部屋が確保され、階層が確保され、ついに敵は相当された。
海兵隊員の負傷者は6名。壮絶な戦いだった。
「では、地下に」
「ああ」
フェリクスたちは地下に降りる。それと同時に魔導式重機関銃の重々しい銃声が響いた。海兵隊員とフェリクスたちは大急ぎで遮蔽物に隠れる。
「クソ。地下にはガンシップの援護を要請できない」
「スタングレネードは?」
「ああ。まだあります」
「任せた」
「了解」
海兵隊員がスタングレネードを投擲し、閃光と轟音が響く。
そして、銃撃。
魔導式重機関銃を据えた陣地にグレネード弾から何まで叩き込まれ、陣地は一瞬で制圧されてしまった。
「制圧!」
「進め!」
地下室の掃討戦が行われる。
残っている敵はそう多くはなかったが、待ち伏せが多かった。ここが襲撃されることを予想していたようだ。
海兵隊員は手榴弾を使って制圧していき、着実に地下室から敵を掃討する。
「クリア!」
「クリア!」
そして、地下室の敵も一掃された。
「ジークベルトは?」
「いないな。どこかにパニックルームがあるはずだ。それを探そう」
フェリクスたちは壁やタンスを調べて、パニックルームを探す。
「ありました! こっちです!」
「よくやった、一等兵」
ようやくパニックルームの入り口が見つかった。
「ブリーチングチャージ、セット」
「3カウント」
爆薬が仕掛けられ、カウントが始まる。
……………………
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます