【過去編】永遠の夏⑮

「僕、ケーキ屋さんでバイトしてて、そこのクッキーなんです。おいしいですよ」


手作りではなかったようだ。


でも、わざわざクッキーを買って来てくれたことが純粋に嬉しかった。


「さんきゅー、明日のおやつの時間にでも食うよ」


「おやつの時間なんて、あるんですか?」


「あぁ。5時間目と6時間目の間の10分間の休憩が俺のおやつの時間だ」


そう言うと、空がクスっと笑う。


「何笑ってんだ?」


「すいません、なんか先生がおやつの時間って言うのがなんか似合わなくて、つい」


「なんだとぉ~」


俺は、片手で結城の脇腹をつついた。


「や、ちょっと、運転中にふざけると危ないですよ…!」


くすぐったかったのか空が身体をよじる。


「似合わないって、からかったお返しだ」


「そんなこと言ったら、先生だって僕の事、何回もからかうじゃないですか」


そんな事を言い合いながら、俺らは笑った。


結城の笑顔は可愛かった。


笑ったときに出来るえくぼと小さく尖った犬歯が、結城の可愛さに拍車をかける。


「結城、もっと笑った方がいいぜ。笑う門にはなんか来るって言うだろ?」


「笑う門には福来たる、ですよ」


「そうそれ」


「先生なのにこれ知らないのって、マズくないですか?」


「俺は体育教師だからいーんだよ」


俺は、今度は結城の脇腹を揉んでみた。


めちゃくちゃ柔らけーな。


揉み心地最高すぎるわ。


「や、やだ、せんせ…っ、ちゃんと運転してくださいよ」


結城は、俺の手から一生懸命逃げようとしていた。


なんか、俺の中のドSが目覚めてしまいそうだった。




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Side 空


最近、学校に行くのが楽しい。


特に火曜日と木曜日、先生と会える時間が1番楽しみだった。


先生にちゃんと教えられるように、教えることを事前にメモ書きして、恥ずかしいけど家で声を出して、教える練習とかもしてみた。


でも、先生と一緒にいると、練習よりも雑談が多くなっちゃう。


最近は、たまに廊下ですれ違ったときも立ち止まって話をしたりする。


先生は、Sっぽいところがあるみたいで、よく僕の事をからかってくる。


でも、それも含めて楽しかった。


逆に、ストリート仲間達とは、最近会っていなかった。


サキヤに、最近行けてなくてごめんという事と、ちゃんと学校に行っている事をラインで伝えると「よかったな!」と言ってくれた。


サキヤのお陰だ。


本当に学校に行ってよかったと思う。


先生との時間、火曜と木曜だけじゃ足りない。


もっと、先生と話をしたいし、一緒にいたい。


いつしかそんな風に思うようになっていた。


こんな楽しい日々が自分に訪れるなんて思っていなかった。


この平凡でかけがえのない日々が、ずっと続いてほしかった。


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