第10話

「食べちゃた?夏ちゃん?」

と少しお口をモゴモゴさせる夏ちゃんの顔を覗き込む私。


『あー、大丈夫だよ秋ちゃん。食べたって言うか物体を一度、魔素に変換して魔石に吸収しただけだからまた変換して出せるからね。でもこの『収納』は、生きている物には使えないんだ。生物を往き来させられるのは、魔法陣のゲートだけ。収納の応用で、チョコパ○とかを魔素にして送ったり向こうの品物、金や宝石なんかをやり取りしているんだよ。この魔導具でね』

と若松君は、店長代理さんの腰の辺りをポンポンと叩いた。


ん?魔導具?

と夏ちゃんと私は、首を傾げる。


「秋ちゃん、夏ちゃん。改めて挨拶をします。僕は、人型魔導人形の店長代理です。宜しくお願いします」

と店長代理さんは、ペコリと頭を下げた。


「えーっ、人形なの?店長代理さん?凄い〜、食費掛からないでずーっと働いてくれるの?欲しい〜!働かせる〜!社畜〜」

そんな私の言葉を聞いて若松君に店長代理さん、夏ちゃんまでも引いている。

「ウソ、ウソ、そんな事しないよ?ダイジョウブダヨー、時々休みはアゲルヨ?」


『相変わらずの鬼畜っぷりだね秋ちゃん。基本、魔導人形も人間に近いから普通に働かせるなら出来るけど無理は、いけないな。叛乱されても知らないよ?店長代理も魔素が有れば魔法陣のゲートを開けるし、こちらへ来る時には、夏ちゃんの魔石を使いゲートを開いたのは、彼なんだから大事にしなくちゃね』

と、まだ引き気味の若松君。


「ごめんなさい、店長代理さん」

と私が謝ると

「大丈夫ですよ、秋ちゃんの鬼畜っぷりは、ここいら辺で有名ですから。ははははっはっ。それより暗くなる前にルナティックに行って、一仕事して来て下さいよ。僕は、留守番してますから、若松オーナー」

と話題を変えるかの様に、若松君を見る店長代理さん。

「そうだね、丁度納品する日だし。うーん、でも夏ちゃんの魔石に入ってる座標だと王都からちょっと遠いんだよなぁ・・・秋ちゃん。ジムニ○に乗ってルナティックの王都に行こうか。向こうで商品を納品したらゲートを開ける手間賃と、ジムニ○で運んで貰う手間賃で金貨十枚出すよ。今の金相場だと大体金貨一枚で七万円くらいになるよ?ウチの店の買取で」


私は、夏ちゃんの前脚を握りピョンピョンと飛び上がり

「行く〜!やったー!お金〜!夏ちゃん犬ガム箱買だよ!ジムニ○出す〜」


早速店の前のジムニ○に飛び乗った私達。

「で、どうすれば良いの若松君?」

『うん、秋ちゃん、先ずはエンジンを掛けてサイドブレーキを外してギアをDレンジに、そして夏ちゃんはゲートの魔法陣を直ぐ目の前に展開して。大きさは倉庫の入り口扉位で」


助手席真ん中側に座っている夏ちゃんがフロンガラス越しに倉庫の扉を見つめて

『ギューイーン!ガシャン!ガシャン!ガシャン!「ゲートオープン!ゲートオープン!魔素・フルチャージです。『警告、近くの人は待避して下さい、消滅しても責任負いません』』


フロントガラス越し、ジムニ○の1メートル前に魔法陣が展開され回るエリザベスに同期してクルクル回っている。


『ルナティックへのゲートが開かれました開かれました』

とエリザベスカラーから声が聞こえた。


「秋ちゃん、アクセル!全開!GO!」


若松君の声に従って私は、アクセルを床までベタ踏みした。

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