第11話

『ズッガーン!!、ゴクン・ゴクン!』

眼の前のゲートを抜けて異世界へ!!と思ったらいきなり何かを轢いて前輪と後輪で乗り上げた。

このジムニ○は前面にアニマルガードが付いているので、キズや凹みは無いと思うけど血が付着してたら嫌だなぁ。

帰りに洗車場に行ってこなきゃ。

などと思いながら道端にジムニ○を停めて下側を覗き込む。

ん?金属鎧を着た人がリアデフ辺りに引っかかっている。

出てこようとしていた若松君と夏ちゃんに待ってと言いジムニ○に乗りギアをRにして少しバックしてリアデフが引っかからない位置にして、ギアをDに。

ハンドルを右に大きく切って甲冑の足の上を乗り上げる様にっとアクセルを開ける。

『グガン、グガン』

と軽い物を乗り上げた音が。

窓を開けて甲冑が動かないのを確認して助手席の夏ちゃんと若松君に

「さっ、行こうか。道は真っ直ぐで良い?」

と言うと

『あ、あ、秋ちゃん!あれ、人だよね?轢いたよね?こんな所に人なんて居ないのが普通だから地球に行く時もここを選んだんだけど、と、とりあえず降りて生きてるか確かめなきゃ』

とオロオロする若松君。

『秋ちゃん、あの甲冑売れば幾らかにでもなると思うわ、車で轢いてキズや凹みが増えて商品価値が減ったら駄目じゃ無い』

とお怒りの夏ちゃん。

ごめんごめんと頭を掻きながらジムニ○を降りた私に続いて降りて来る2匹。

若松君は、タッと甲冑に近づいて甲冑の面を開け生死を確かめる。

『むっ、コイツは街道に出る盗賊の親玉だな手配書で見た事がある、この甲冑も奴の特徴にピッタリだ。確か死なないと脱げない呪いの甲冑だったな』

と、甲冑の兜部分をスポッと抜きなら言う。


「ねえ、若松君。こっちで盗賊とかって成敗とかしたら戦利品は成敗した人の物になる?」

と甲冑の足の辺りをコンコン蹴りなら私が聞くと若松君が

『そう、基本倒した者の戦利品になるし襲われたのを返り討ちにしてもお咎め無しだから心配する事は無いよ秋ちゃん。でも、人を轢いてそのまま行こうとする鬼畜の所存。凄いよ秋ちゃん』

戦利品の甲冑を剥ぎ取るのに忙しい夏ちゃんが

『店に行く間に車内で、向こうは命が軽いから誰も見てない所で殺されたら、それっきりだから気をつけてねと話してたから。秋ちゃんは、悪くないわよ。でも戦利品と盗賊の親玉の賞金を逃すのは駄目でしょ?』


『夏ちゃんも鬼畜だねぇ、合ってるよ二人共、ルナティックに。多分、死なないと脱げない呪いの甲冑だけ警備の詰め所に持って行けば討伐のお金貰えるよ』

と額に前脚を当てる若松君。


そしてジムニ○の後部座席に甲冑を放り込み盗賊の持ち物から所持金(金貨三枚)とナイフを頂く。

『ギューイーン!ガシャンガシャン!『魔法陣・展開します。標的ロックオン魔導砲発射!』ズガーン!』』

盗賊の親玉の亡骸は光の粒になって消えて行く。

小さな粒がエリザベスカラーに吸収されるのが見える。

まだ明るいけど、蛍の光みたいで綺麗。


『うーむ、こちらの人を魔素に分解して吸収しても余り魔石にチャージされないみたいだね。やはり地球の生物が関係あるのか?魔素が薄いのに義兄に話してみるか』

顎に前脚を当てた若松君が夏ちゃんの魔石を見て、頷きながら呟いている。


「ここから王都まで15キロだっけ?ジムニ○なら30分も掛からない?暗くなる前に行きましょう」

私は、ジムニ○のドアを開けながら言った。

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