居酒屋の風景
「─────じゃあなんだね?。キミはエビが食べられないのかね?」
「…はい。あの味がどうも好きになれなくて」
「そっか…それはかわいそうだな」
「…課長。かわいそう、とはどうゆう意味でしょうか?」
「文字通りだよ。こんな美味いものを食べないなど、人生の半分を損してる様なものだよ。いやぁ、こんなに美味いのにねぇ(にやにや)」
「(カチン)…そうですか?。ボクはそれより、エビの漁師でもエビの養殖をしてるわけでもない課長の人生に失笑が隠せません。だって長い人生の喜びの半分が食べるだけのエビとか、課長はどんだけショボい人生プランなんですか?(プププ)」
「(ムカッ)キ、キミっ!!。いくらなんでもそれは侮辱が過ぎるのではないかねっ!!。それに人生の半分とは誇張表現というやつだよ。いくらなんでもエビが半分を占めるはずがないだろうが!」
「(はぁぁぁ?)じゃあなんですか?。課長は誇大な事を言ってまでボクを煽っていたってことですよね?。それなら相応の侮辱を返されても当然とは思いませんか?」
「(ムキーーーーーッ!)キ、キミっ!。上司に向かってその口のきき方はなんだねっ!!」
「(はぁーーーー)あと、さっきは折角の課長との飲み会の雰囲気を重くするのも悪いと思って敢えて言わなかったんですが、ボクはエビアレルギーです。そこまで強くはないのでエビも調理したフライパンで料理を出されても、多少痒くなる程度で済みますが」
「(うっ…)そ、それがどうだというのかね!?」
「ですが、エビを食べてしまうとそんな事は言ってられません。お医者様の言うことには、呼吸困難など発症して命の危機に陥る恐れも十分考えられるので、絶対に口にしないようにと止められています」
「(はっ!)……………」
「それに先程課長は言いましたよね?。『エビを食べないなんて人生の半分を損している』と」
「い、言ったが、それが何だというのかね!」
「ボクは食べれないことで人生の半分を損してるんじゃありません。食べてないから今もまだこの人生が続いているのです。分かりますか?、課長の言った事は『文字通り死ぬほど美味い毒だよ』と同義なんですよ?。食べる事の出来ないボクに対して、どれだけ残酷な事を言っていたのか分かってるんですか!?」
「(うぐっ)……………す、すまなかった。キミがアレルギー持ちとは知らずに本当に失礼なことを言ってしまった。キミに言われて気付かされたよ、私は他人への配慮にかけていた。本当にすまなかった!」
「……………頭を上げてください、課長」
「キミ…これだけ愚かだった私を許してくれるというのかね?。本当にキミは最高の人格者だったんだな」
「さっきの、全部ウソっス」
「(ぽかーん)……………はい?」
「課長が煽ってきてかなりムカついたんで、ちょっと痛い目見てもらおうとそれっぽい事言っただけっス。マジであの土臭い味が嫌いなだけで。あと、見た目がでっけぇ虫みたいでキモくないですか?。ってなわけで、アレルギーとかないっスから」
「な、な、な、なっ!?」
「でも、マジでアレルギーの奴もいるんで、さっきみたいな事は言わないほうがいいっスよ?。下手すると裁判沙汰にも為りかねないデリケートなとこなんで、気をつけたほうがいいっス。んじゃ、ゴチでしたッ!(ガラガラ、ピシャッ)」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」
総評:リアルでよくありますよね?
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