実際作者がどんなつもりだったのか問題



「─────皆さん分かってると思いますが、大前提としてコイツは変態です」


「そりゃそうでしょうね。そうじゃないといきなりあの行動はしないはずですから」


「でも仮に、こうなるのを見越してコイツが放った手の者だったという可能性は?」


「それはないでしょうね。そもそも彼女は今回、嫉妬の逆恨みで襲われただけの被害者ですから」


「ということは、偶々コイツの性癖とピッタリ合っちゃったって事なんですかね。ご都合主義も甚だしい気もしますけど、彼女不幸すぎません?」


「ところで、私思うんですけど。喉に詰まった欠片が取れるとか、コイツどさくさで舌や唇をめっちゃ吸ったって事ですよね?。初対面ディープキスとか凄すぎ」


「確かに。ではコイツは初対面の彼女の唇をめっちゃ吸ったって事で。他にありますか?」


「はい。彼女は絶対に抗毒スキルが備わっていたと思います」


「なぜそんな結論に至ったんですか?」


「はい。一口齧っただけで、吐血も何もなく突然倒れたのを見ても当然と思うほど、強い毒が仕込んであったのは確実ですよね?」


「…確かに、予想より強力な毒で焦ったという描写はないですね。あと、毒で苦しんだ描写も」


「そうなんです。つまり彼女の死因は『喉に欠片が詰まっただけの窒息死』だったって事なんです。だからぶっちゃけると、普通の林檎を貰っても死んでた訳ですね」


「なんというか、彼女迂闊すぎませんか?。それはそうと、なぜ抗毒スキルを持っていたと思ったんです?」


「窒息死して、従者達に運ばれて、寝かされて周囲で従者が泣いて、コイツが通りかかって吸いまくるまで喉に毒があったわけです。普通に考えたらこんな強力な毒が仕込んであったなら喉中毒まみれになってておかしくないのに、詰まってた欠片が出たら起き上がるとか普通じゃないです」


「だとしたら、コイツも同じく抗毒スキル持ってたって事になりません?」


「えっと、なぜコイツまでそんなスキルを持っていると思うんですか?」


「はい。彼女が倒れたと従者共は泣くばかりで救命処置の一つもしてないじゃないですか?。家まで運んで周囲を花を飾るとかはしてますけど、助ける気はゼロだったじゃないですか?。こんな雑な奴らが齧った歯に付いていた毒を拭く様な気遣いが出来たとは到底思えないんです」


「確かに、7人もいたわりになんの成果を上げてないどころか、助ける素振りすら見せてませんね。言う通りただ運んだだけの可能性は大いにあると思います」


「で、ですね。さっきも言ったように一口齧っただけで即死する毒がべっとりついた歯や舌をさんざん吸ったなら、コイツもただでは済まないはずなんです」


「なるほど。ではコイツも彼女同様抗毒スキルを持っていたって事で」


「はい。彼女は抗毒とは別に、生命活動に異常がおきたら自動でコールドスリープをするスキルがあったのではないでしょうか?」


「えっと、それは何故そう考えたのでしょうか?」


「はい。倒れた彼女はきっとキレイな寝姿ではなかったと思うんです。それなのに后が去ってのんびりやってきて何の処置もせずにただ従者が運んだだけだとしたら、普通顔色とか生気がない感じに変わってるはずなんです」


「なるほど。救命処置すら行ってないような従者がメイクをしてあげて寝かせていたとは確かに考えにくいかもしれませんね」


「だとしたら、そんな土気色の顔をした彼女を見て『美しい女性だ』とか思いますかって話なんですよ。まぁコイツ変態だから土気色の顔が美しいと思った可能性もありますけど、実際は復活した後結婚してるし、普通に綺麗な顔のままだったんじゃないかと思うのです」


「なるほど、一理ありますね。では彼女は生命活動に異常をきたしたらコールドスリープに入るスキルを持っていたってことで」


「はい。結局コイツと彼女は結婚するわけですけど、皆さんはこれ、どう思います?」


「コイツにとっては趣味の顔なんだし、彼女からしたらそこそこイケメンで金はあるだろうし、お互いwinwinな感じだったのでは?」


「私はそうは思わないんですよね。だってコイツは死体の彼女に一目惚れしたわけでしょ?。だとしたら、また死体に戻したくなると絶対に考えると思うんです」


「だとしたら、死体になった時点でコールドスリープのスキルが発動しますよね?。つまり彼女は腐りも劣化もしない美しいままで文字通り時間を止めるわけですよね?。コイツにとっては願ったり叶ったりなんじゃないでしょうか?」


「…なんというか、この話ってなんで世界中で愛されてるのか分からなくなってきますね」


「じゃあ、まとめますね─────」






『─────というわけで、白雪姫は王子の妻となり城へと迎い入れられましたが、その後王子の手によって絞殺され死という深い眠りに入り、コールドスリープで美しさだけは保たれるのでした。


王子は国民に『姫は一生眠る呪いにかかった』と公表し、たまに窓の外から美しい姿のまま寝てるようにしか見えない白雪姫を周囲に見せ、安心をさせます。


国中から王子は『眠りの呪いにかかった姫を献身的に世話し、愛し続ける人格者』と呼ばれるようになります。


そして死体愛好家の王子はと言うと、理想の劣化しなくて柔らかいままの死体を手に入れ、毎夜毎夜歪んだ欲望を姫にぶつけるのでした。


王子の性癖は一生変わることもなく、王子が死ぬまで、そして死んだ後も未来永劫眠り続ける白雪姫に復活の未来は無いのでした。


めでたしめでたし』


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