第22話 唯一無二

2018年9月


 まだまだ残暑が厳しい9月のとある日。

私は再び尾道駅に降り立っていた。

小さな旅行鞄を肩に掛け、2ヶ月前と同じ道のりで祖母の家を目指した。


 今回は荷物をかなり減らしたにも関わらず、祖母の家に着く頃には、やはりシャツの色は濃い色に変わっていた。

玄関の呼び鈴を鳴らすと祖母が、笑顔で出てきてくれた。

「いらっしゃい、晴陽ちゃん。ほうじゃぁ『おかえりなさい』じゃったね。」

「おばあちゃん、ただいま。」はにかんだ笑顔で答えた。


 着替えて、天神さんへ急いだ。夏の忘れ物みたいに、蝉が少し鳴いている。

旅路で疲れたはずなのに、何処にこんな力が残っているのかと思うくらい全力で走った。

駆け上がった先には、久しぶりに見る賢太の笑顔があった。

たった2ヶ月なのに、夢でしか逢えなかった恋しい人を目の前にすると胸が熱くなった。

「おかえり、晴陽。」

「ただいま」

もっと近くに感じたくて、もっと現実だと感じたくて、お互いを強く抱きしめた。

賢太の匂いと熱が伝わって、私はずっと心に空いていた穴が埋まっていくのを感じた。私達はきっと唯一無二の存在になれるだろう。


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