第7話 異界の者
お祭も終わり、人もまばらになってきた。
私達は楽しい余韻で、その場から離れることが出来ずにいた。
二人共言葉少なく、街を見下ろしていた。
何故か、私は、もう二度と楽しい事がないような不吉な予感に襲われていた。
その時、暗闇から人影がふらりと現れた。
よく見ると木村君。だけど、木村君じゃない、と本能的に感じた。
まるで人形のように表情がなく、瞳は数日前に見た時と同じ漆黒の闇。
木村君どころか人間かすら定かではない。恐怖に足がすくんだ。
そんな私を木村君から遮るように、シロウが私の前に出た。
そして、剣を持ち綺麗な構えで立った。
よく見ると、木刃だった。
シロウは、木村君に向かって斬りかかった。
木刃なのだから人は切れるはずはない。
しかし、一瞬本当に木村君は切られたのではないかと思った。
倒れた木村君を抱え、シロウはベンチに寝かせた。
しばらくして目を覚ました木村君は、何も覚えていなかった。
しかし、纏っていた異様な気配はキレイに祓われていた。
彼は、介抱していた私達に迷惑をかけたのではないかと、お礼を言って帰った。
私はまだ状況が理解できず
「あれは本物の刀では無かったよね?」
「本物ではないかと問われると本物だ。
あれは、ここの御神木の樫の木で作られた木刃だ。
人は切れないが、悪霊や異形の者は切れる。」
私は理解出来ずにいた。
色々聞きたいことは山積みだけど、何から聞けば良いか分からない。
しかも門限はとうに過ぎていた。
明日出直して話を聞く以外無かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます