第4話 逢魔が時

 年に一度のお祭り『天神祭り』が近づいてきた。

子供はもちろん、大人たちも浮き足立つお祭りだ。

子供達は沢山ではないが夜店や屋台がでるのを楽しみに、お手伝いをしてお金を貯める。そして指折り数えて、お祭りを待っている。

私も毎年友達と行くのを楽しみにしている。

でも今年はシロウを誘いたいと思っていた。



 今日は委員会があったので、いつもより下校が遅くなった。

でも、どうしてもシロウをお祭りに誘いたくて、彼を探して境内を歩き回っていた。

夕日が辺りを真っ赤に染めていた。

あまりに赤くて、現実がどうか分からず不安になっていた。

影が妙に色濃くうつり、影の中で何かがうごめいてる?

私はゆっくりと近づいていった。


その時、急に右手を引っ張られた。

「陽葵、何してるの?」

驚いて振り向くとシロウが立っていた。

シロウは私の方を見ずに私がみていた影の方を見つめていた。

「シロウ。探してたのよ。」

そう言って影の方をもう一度見ると、もう何もいなかった。

シロウは、

「陽葵、もう逢魔が時だ。こんな時間に一人で、境内をウロウロしないほうが良い。」

「逢魔が時?」

「そうだ逢魔が時、昼から夜になる黄昏時だ。

黄昏時の語源は、『誰そだれそかれ』だよ。

陽葵は信じないかもしれないが、人と人でないものの区別が危うくなる時間だ。

気を付けて。」


 私は、怖くなってシロウの腕にしがみついた。

シロウは笑って

「大丈夫、今は俺がいる。ところで、何故俺を探していたの?」

「そう、もうすぐ天神祭りでしょ。シロウはどうするの?」

少し意地悪い笑みを浮かべ

「陽葵はどうするの?いつものように友達と行くの?それとも?」

私は真っ赤になって言った。

「シロウと行きたいの。」

シロウは嬉しそうに笑って私を抱きしめ、優しく髪に口づけ

「ありがとう、陽葵。一緒に行こう。」と言った。


 シロウは石段を降りる所まで送ってくれた。

「陽葵、気を付けてお帰り。」

「うん。おやすみシロウ。」

「おやすみ、陽葵。」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る