第2話 落雷
彼とは梅雨の雷が地響きを轟かせている日に出逢った。
その日、学校を出た時は晴れていたので傘を持っていなかった。
私は急な雨に降られた。小雨になるのを待つため、天神さんの社殿の軒下で雨宿りしていた。
雨は、やむどころか雷まで引き連れてきた。雷が一歩ずつ近づく気配に怯えながら立っていた。
その時閃光が走ったとほぼ同時に、もの凄い音をたて雷が境内の桜の木に落ちた。
私はあまりの恐怖にしゃがみ込んだ。
恐怖に震えていると、少し低めな声が耳元で囁いた。
「もう大丈夫だ。」
私が顔を上げると、目の前に黒髪に
私が驚き、尻餅をつきそうになった。
彼は私を抱き寄せ、背中をトントンとまるで子供をあやすように
「落ち着いて。」と言った。
彼の低い声は耳に優しく響き、私は不思議と落ち着いた。
彼の少し、くせのある前髪から覗く瞳は、真っ直ぐ私を捕らえた。
瞳はよく見ると、瑠璃色がかったキレイな色だ。
私はその鋭い瞳に心を奪われてしまった。
彼の名前は『シロウ』と言った。
シロウは神主さんの遠縁に当たるらしく、夏休みに遊びに来たと言った。
私は高校への登下校の際、天神さんの境内をよく通る。
その時は必ずお参りをした。
我が家から、細い路地を通り石段に出る。
石段を上る天神さんだ、そこには大きな御神木がある。
御神木は楠で樹齢500年だという。
夏は御神木の作ってくれる大きな日陰で読書をしたりしていた。
また、魔除けの獅子と狛犬が神社を守っている。
口が開いて角が無いのは阿像(獅子)角があり口を閉じた吽像(狛犬)だ。
子供なら阿像も吽像も恐がりそうなものだが、何故か小さい頃から一度も恐いと思った事はなかった。
それどころか像の近くで遊ぶと良い事が起きた。
痛かったお腹が治ったり、無くした物が見つかったりと。
だからか天神さんが大好きで、夏は友達と蝉やバッタを捕り、冬は積もった雪で雪だるまを作ったりと毎日天神さんで遊んで過ごした。
成長と共に天神で遊ぶことは減ったが、私の日常に天神さんがあった。
シロウは私と同じように御神木の日陰で読書をしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます