第9話 俺、騙されやすいですか?

辺りには大きな水槽がいくつも並び、沢山の魚が優雅に泳いでいた。


「ココは何処なんですか?」


「ここはすみだ水族館。スカイツリーの地下よ。ほらっ ペンギンって歩くのはヨチヨチ歩きで頼りないけど・・・ 泳ぐ姿はこんなに優雅に素早いのよ。」


「ペンギンがただ突っ立ってる姿もカワイイですね。」


周囲を見渡してみると・・・

入口に近い水槽の側に何故か不釣り合いな“大きなノッポの振子時計”が置かれていた。

振り子は魚の泳ぎにシンクロする様にゆっくりゆっくり動いている。

俺は振り子と水槽を交互に見比べた。


・・・俺はこの世界に来る前に神様から言われた事を思い出した。

“この世界に居るのは2時間位にしなさい。”

振子時計がやたらに気になってきた。


「さっきの話しの続きだけど・・・」


「ハイ、日向村の話しですか?」


「そう、日向村の話ね。単刀直入に言うね。翔君だっけ?あなたの身体を私にくれないかな?あなたにはこの世界の主となってもらうから・・・」


「えッ? そんな事出来ません。俺はこれから修業して神様になる約束を・・・」


「代わりに私が修業して神様になってあげるわ。ココでの主も、もう飽きちゃた。ねぇねぇいいでしょ?」


「俺には日向村3000人を護る使命があります。」


「神様って3000人のシモベが居ていいよね。ケチケチしてないで身体よこしな!私が大切に使ってあげるから!」


ミウ様はまたパチンと指を鳴らした。

その瞬間ミウ様は姿を消し、気がつくと辺り一面は水に浸かっている。

俺の意識は遠のいていった。


気がつくと目の前には神様が俺を心配そうに覗いていた。


「翔、戻ったか? おかえり・・・」


俺の身体は自由に動かなかった。

俺の身体は近くに有った木刀を拾い上げると神様に向けて振り下ろした。

神様はあっさりかわして俺の背中を平手でバンと叩いた。


「神様、俺を殺してください。俺の身体はミウ様に乗っ取られました。神様や村人の安全を保証できません。神様との約束を守れなくて申し訳ありませんでした。」


「翔、もう大丈夫だ。翔にかかっていた催眠術はもう解けている。身体はもう自由に動けるようになっただろう。」


俺は恐る恐る動いてみた。

普通に動く。


「ハイ 身体が動くようになりました。」


「たぶん振り子みたいなモノを見ていただろう? その時、暗示にかけられたんだ。ミウ様はこの世界に干渉するチカラはもってないんだ。コレはミウ様のイタズラだ。あまり言いたくないが俺も騙された事がある。」


「えっ そうなんですか?」


「ミウ様は翔の事を試したんだ。未来の神様となる翔をな!」


「それで・・・ 俺は合格だったんでしょうか?」


「あぁ、たぶん合格だ。だが、剣術の基礎がなってないぞ。明日からまた鍛えなおしてやるからな。」


俺はホッとすると同時に、自分の未熟さを悔しく思った。

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