第8話 月がまねいた大水害

「100年前まであんな風に普通に月は有ったのよ。100年前まで普通に私達を見守っていたの。でもあの日、月は地球の引力からときはなれたの。その時大水害が起きた・・・」


「月があんな風に普通に有って僕らを見守っていた・・・?」


「あと・・・ “ノアの方舟伝説”って知ってる?」


「ハイ 小さい頃、父からその物語りをよく聞かされました。」


「それじゃ・・・ その時の大量の水はいったいドコから来たでしょう?」


「エッ、分かりません・・・」


「答えは月よ! 月は殻付きの彗星だったの。その彗星が地球の引力に捕まってそして内部の水を地球にぶちまけた。」


「そんな事が・・・ 信じられない。」


「あら? 昔は“潮の満ち引き”っていうのがあって月の引力が影響してるのよ。それに月は自転していない為、地球側にはいつも同じ面を向けてるの。なんでだと思う?」


「まったく分かりません。」


「それはね・・・ 月の内部に残った水が重りになってるの。水風船の水が常に風船の下側にあるでしょ。アレの原理と一緒。」


「・・・ハイ?」


「そして・・・ 地球の引力から離れる時、月から大量の水が放出された。まるで大きな水滴が落ちる様に・・・」


「信じられない事ですが結果的にこうなったのですから真実なんですよね?」


「私の父はね・・・ 事前にこうなる事が分かっていたの。」


「エッまさか・・・」


「宇宙機構がその一年位前から月が地球から離れる事をアナウンスしていたの。でも、その事で何が起こるかは一切知らされなかった。なぜだと思う?」


「分かりません。」


「それはね・・・ 世界の経済を混乱させる責任をとりたく無かったからよ。そして一部の人々がその日が来るまでせっせと準備していたの。」


「それでは犠牲者が・・・」


『父は「大水害が起きる事をアナウンスして備えるべきだ。」と主張したの。そうしたら地位や名誉を剥奪され、狂人よばわりされたわ。SNSでゲリラ的に公表したりしたけど、すぐ揉み消されて全然広まらなかったそうよ。』


「そんな事があったんですね・・・」


「父は父なりに大水害後の準備をしようと決めた。それが今の日向村の構想よ。」


「エッ? それじゃあ 秘伝書や神様をつくったのは・・・」


「そう! 私の父よ。父は神様を私にしてもらいたかったみたいだけど・・・ こんな身体ではね・・・」


ミウ様は指をパチンと鳴らした。

辺りの風景が地下室の様なところに一瞬で変わってしまった。

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