第10話 義妹と添い寝1
「……そういえばさ、おにいってどこで寝るの? 他の部屋に行くんじゃ、私の様子をずっとみることはできないし、椅子に座ったまま眠るっていうのもなかなかキツイ気がするんだけど…………」
「ああ……、それについては大丈夫だ。この病院は簡易ベッドの貸し出しがあるみたいだから、桐葉の隣で何不自由なく寝れるみたいだぞ。まあ、普通のベッドよりは寝心地が悪いみたいだが………。一晩くらいなら全然大丈夫だろ」
「大丈夫じゃないよっ!! だって……、おにいは疲れ切ってるんだし、そんなところで寝てたらそっちが体調崩しちゃうよ! 逆にもしぐっすり眠れたとしても、その時私の様子が急変したら気づかないじゃん! だから、簡易ベッドは良くないと思いまーーっす!!」
なぜか桐葉はムキになって、俺の睡眠場所を口うるさく否定してくる。とはいっても、それに従えば実質寝る方法が無くなる俺からすれば、桐葉の言う通りにするわけにはいかない。
……まあ、その代わり桐葉が眠るまで椅子に座って、様子を見ていれば十分だろう。
現実的な論理の帰結を脳内で果たした俺は、簡易ベッドを取りにそのまま椅子から立ちあがろうとする。しかし、その瞬間桐葉は息を荒げながら俺の肩を押さえて、
「ちょっと! 今、私の話を全部無視して簡易ベッド取りに行こうとしたよね!? 最後まで話聞かないなんて、おにいひどいよ!」
「……じゃあ、俺はどこで寝たらいいんだ? 椅子には座らずに寝てほしい……、でも簡易ベッドには寝てほしくない………。希望を全部叶えたら、一緒に寝るくらいしか選択肢が無くなるだろ!」
「……そうだよ! だから、最後まで話を聞いてって言ったんじゃん! 私が満を辞して添い寝希望を出そうって時にそれを無視するなんて、やっぱりひどすぎるよっ!!」
「ええ………! 添い寝!? な、なにをまた変なことを言って……………!」
桐葉の突拍子もないわがままに俺は困惑して、更に声を荒らげる。すると、引き戸が怒りのままに強く開け放たれ、眉間に深い皺を寄せた看護師が現れた。
「病院内ではお静かにっっ!! 全く……、簡易ベッドを受け取りに来ないからこちらから出向いてみれば…………。病室内でいちゃいちゃですか……。この調子なら、簡易ベッドなんて必要ないんじゃないですか?」
「ハイっっ! 簡易ベッドは必要ありません! なぜなら私達は、これからイチャイチャするからですっ! なので、二人同じベッド添い寝希望でお願いしますっ!!」
「バカっっ!! おい、桐葉。お前なんてこと言って………!」
「静粛にっ!! 何度も言わせないでくれますか? 私も長時間勤務で疲れ果ててるので、いつまでも大声でやり取りなんて無理ですよ! ……そんなに、強く希望するのであれば添い寝は許可しますので、どうかお静かにお願いしますよ? では、私は失礼しますっ…………!!」
看護師はそう言うと、凄まじい勢いで扉を閉めて、ついに俺の弁解は届くことなく桐葉の希望が通ってしまった。おのれ……。この可愛小憎い義妹め………。俺は黙って、じつとりとした視線をベッド上に送る。すると桐葉は軽く頬を赤らめながら、とぼけるように照れ笑いを浮かべたのだった。
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