第62話 警戒してよね!?
―今日は作戦会議をするわよ、―私の家に集合、―わかった?、―十分警戒してきてよ、くれぐれも厳重にね!?
放課後の教室でスマホを開くと、遥からの怒涛の念押しメッセージが送られていた。昨日からの怒涛の展開で、あいつもすっかり特別警戒モードになってしまったらしい。まぁ、俺自身もいつも以上にビクビクしながら一日を過ごしていたから何も言えないか………。
全く……。今日は桐葉に絡まれつつ、廃部勧告を見に行くまでのいつも通りの流れしかなかったのに、すっかり疲れてしまった。本当ならこのまま帰ってすぐに眠りたいところなのだが、そんなわけにもいかないしな…………。
「とりあえず、遥の言う通りにしないとな……。もうそろそろ行くか………」
俺は自分に言い聞かせるように、伸びをしながら独り言をつぶやく。これが、運の尽きだった。
「……お、に、い? 一体どこに行くの? 帰るじゃなくて、行くだもんね? 遥さんと何か用事でもあるの?」
やけに存在感のある声に反応して発せられた方向に目を向けると、赤い瞳を輝かせながら不気味な笑顔を浮かべる義妹の姿があった。
やってしまった。警戒しろと言われてすぐにやらかした。だが、待てよ。どうして桐葉はここにいるんだ? この場面なら桐葉は家に帰ってるはずなのに………。
また現れた疑問に俺は戸惑うが、目の前の少女は考える隙も与えず無言の圧力と共に近づいてきた。
「あれ〜〜? なんでそんなに困った顔してるの? もしかして、私聞いちゃいけないこと聞いちゃった? ねえ……、答えてよ。おにい」
「いや……、別に用事はないぞ。ただ……、ほらあれだ。顧問の先生を探す計画で、は……、水蓮寺に事前調査をしておくように頼まれたんだよ」
「なるほどね。そういうことだったんだ。なーんだ、それなら遥さんも言ってくれれば良かったのに。でもさ、今から調査って遅くない? この時間はもう職員室にほとんど人いないと思うけど…………」
「そうか、じゃあ調査は明日以降にしておこう。なら、俺は失礼して……」
俺は望み薄な受け流しムーブで教室を去ろうとするが、案の定桐葉に肩を掴まれていた。遥、今日はお前のところに行くことはできなさそうだ……。俺は遠い目をしながら、心の中で謝罪する。すると右肩は強引に引っ張られて、膨れ顔の桐葉が姿を現す。
「とりあえず何も用事がないなら、帰らないとダメだからね? おにい、今日は怪しいから帰るまで見張り続けるから」
「分かった。今日は一緒に帰ろう。だから、そんなに睨まないでくれよ、な?」
俺は桐葉の機嫌をとりながら、二人で教室を後にする。そこで桐葉に集中したせいか、その時の俺は遥からの追加メッセージに気づくことはなかった。
―緊急事態、―お父さんが学校に向かってる、―とりあえず、校舎から出ないで
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