第76話 義妹がエグすぎる4
「ふははははは! どうした一条桐葉⁉︎ 試合前にあんだけ啖呵切っておきながらもう限界か? だから大食いリレーを舐めるのはやめておけと言ったんだ」
「…………」
どけだけ煽られてもただスプーンを持ったまま虚空を見つめる桐葉。その間にも他の参加者はものすごいペースでカレーをかきこんでいく。
「おおーーっと!? 大武剛志選手、圧倒的なペースでカレーの皿を積み上げていく! このまま一条桐葉選手に追いついてしまうのかーーっ!?」
「当たり前だ! いくら一、二食目でリードを作ったところでここで食べないやつに負けるわけないだろう!? 総合優勝は俺たちのチームが貰うぜ!」
大武剛志はその巨体を揺さぶりながらカレーを次から次へと食べ進めていく。わんこそばで見せた桐葉の神がかり的なスピードを凌駕する勢いと常人離れした胃の容量。このままでは本当に桐葉が負けてしまう……。しかし、ここで状況が一変する。
「お……、おまたせ致しました……。一条さんに頼まれた通りにカレー4キログラム分、まとめてお持ちいたしました……」
「ありがとうございます! では早速いただいちゃいますね!」
桐葉は両手を合わせるとスプーンを持ち替え、カレーを食べ進め……ることはしなかった。桐葉が手に持ったのは合計4キロものカレーが入った大皿。そう、彼女は大量のカレーを飲んでいるのだ。普通、ルーとライスを混ぜ合わせもせずにあれだけの勢いで飲めるわけもないのだが桐葉は一切休憩も取らずにゴクゴクと飲み干してく。そして…………、
「終了ーーーーー! なんと一条桐葉選手6分でカレー4キロを平らげてしまいました! そして三戦に及ぶ大食いリレーの結果は……、文句なしで役員チームの優勝ですっ!!」
「わーーーいっ! やった、やったーーー! おにい、遥さん。私、やったよーー!」
桐葉はガッツポーズをしながら喜びを全身で表現する。あれだけの食べ物を食べたばかりにも関わらず、桐葉のお腹はいつもと変わらず引き締まったままだ。一体、あの体のどこに食べ物が入ったのか……。俺は化け物じみた義妹にもはや恐れおののく。すると桐葉のもとにあの大男が近づいていった。
「負けた……。まさか本当に負けるとはな……。完敗だ、一条桐葉。お前、本当に凄い奴だったんだな」
「いえ、大武さんも最後の追い上げ素晴らしかったです! また機会があったら戦ってください! 今回はいい勝負をしてくれてありがとうございました!」
桐葉が笑顔で握手を求めると大武もそれに応える。勝負を通じて芽生えたライバルの絆に会場は大いに盛り上がりを見せた。
「桐゛葉゛ち゛ゃ゛ー゛ー゛ん゛、良゛か゛っ゛た゛、良゛か゛っ゛た゛わ゛ね゛ぇ゛! 本゛当゛に゛良゛い゛勝゛負゛だ゛っ゛た゛わ゛ー゛ー゛!」
会場が感動に包まれているにしても場違いな大声で泣き叫ぶ水蓮寺。……いや、大食いでここまでなるか? あまりにも盛り上がったこの状況のせいで俺は逆に冷静になっていた。
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