第73話 義妹がエグすぎる1

「これを……、今から食べるのか……?」


「そうだよ! すごーい、私なんだかよだれが止まらなくなっちゃうね!」


 メインステージの裏に着くと、真っ先に大量の食べ物が積まれている様子が目に飛び込んできた。生徒会関係者がみんな集まって食べ物を用意するのを見ると会場の客全員に炊き出しでも行うのかと思ってしまうが、今からこれを12人の代表者が平らげてしまうというのが事実である。そば、ホットドック、カレーの三種類の食物を一チーム三人のメンバーが担当し、制限時間内に食べた合計重量によって勝負を決める。世にも珍しい大食いリレー対決というわけだ。


「三種類の食べ物どれを選んでもおいしそうだよね~~。私、何を担当するか全然決められないよ~~」


「じゃあ、俺の分も含めて二つ担当したらどうだ? それだったら楽しさも幸福度も倍になるぞ」


「そっか! 確かにおにいの分まで食べちゃえば選びやすくなるね! でもそれだとおにいと一緒に出れなくなっちゃうし……。ああ! 私、一体どうしたらいいの⁉︎」


 桐葉は迷いで頭を抱えながら絶叫する。まあ、まず一品につき数キロは用意されている料理を二つ担当するという選択肢が選べる時点でもう人の領域を超えている。そんな悶え苦しむ桐葉の人外っぷりに提案者本人である俺も少し引いてしまう。そんな時、後ろからまたいつものバカでかい声が聞こえてきた。


「誰が後ろで叫んでいるかと思ったら……。桐葉ちゃん、もう一条を連れて帰って来てたのね。ということは、一条アンタ桐葉ちゃんに何か余計なことしたんでしょ⁉︎ 苦し紛れの言い訳なら要らないわよ!」


 言い訳をしたところで水蓮寺の機嫌は悪化することしかないと熟知している俺は桐葉に素敵な二択をプレゼントしてあげたことを正直に告白する。すると水蓮寺は未だに頭を抱え続ける桐葉に近づいていった。


「……桐葉ちゃん。そんなに食べたいの?」


 水蓮寺の質問に桐葉は無言ながらもブンブンと頭を縦に振る。おそらく水蓮寺は俺の頭のおかしい誘いを断らせるために説得しようと考えているのだろう。俺は無言で桐葉を見つめる水連寺から目を逸らし胃袋の容量を少しでも開けるためにストレッチを開始し始める。すると水蓮寺は、


「じゃあ、桐葉ちゃん。私の分もやる? 桐葉ちゃんが三人分担当すれば三種類全部好きなだけ食べれるわよ」


「ええええええっ! いいんですか⁉ やります、やりますっ!」


 大真面目な顔から浴びせられた大馬鹿な提案に腕を高く上げてのる桐葉。俺は呆気にとられながら少し浮かせた腰を車椅子につけ直した。

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