第27話 開かない体育館倉庫1
少し汗の湿気で蒸し暑くなった体育館倉庫。俺はマットの上で仰向けになり、ただ一点を見つめていた。どんな感情を抱いているのか少し優し気な黒い目で俺を見つめる水蓮寺は俺を押し倒して顔を近づけようとしていた。
「一条、あなたも目を閉じなさい。私が今から……、するから……」
「分かった。じゃ、じゃあ……」
俺は水蓮寺に言われるままに目を閉じる。何で今こんなことになってるんだ? 熱気と息遣いが近づいてくるのを感じながら俺は今までの数時間を思い返していた。
遡ること2時間前。競技運営の係になった俺と水蓮寺は隷属部の部室で競技の内容とルールの最終調整を行っていた。最終調整といっても水蓮寺と桐葉が完璧な競技案を仕上げていたから俺が競技を試してみるだけだったが。そして俺は苦悶しながら床を這いつくばっていた。
「ほら、さっさと進みなさい。この下僕が!」
「ヒーーーッ! すいません、ご主人様ー!」
「一条、もっとやる気を出しなさい! そんなんじゃちゃんとしたテストプレーにならないでしょ! もういいわ、5分休憩したらもう一回やるからね!」
そう言うと水蓮寺は構えた鞭を床に置く、両手を背中で縛り付けられた俺は顔から床に倒れ込んだ。さっきから水蓮寺の競技ばっかりやってるがどれもきつすぎる。特に今やってる奴隷競争はしんどい。さっさと終わらないかな……。俺が顔を横に向けて何とか呼吸をしていると静かに扉が開いた。
「失礼いたします。もうすぐ体育館を使う部活動が退出しますので二人を呼びに来たのですが……。お取込み中でしたか……?」
「違う! 今はただ先に教室でできる競技を試プレイしてただけだ!」
ああ、そうでしたかと石立は俺を軽く哀れんだ目で見ると、両手の縄をほどいてくれた。俺が立ち上がるとすでに水蓮寺は体育館に向かっていったのか部室から姿を消していた。
「そういえば……、今日体育館倉庫使いますよね……」
「ああ、確かに今日は使うな。……で、それがどうかしたのか?」
「いえ……。気にしないでください……。ふふっ」
石立は不気味に笑い声をあげる。異変のことを知ってる石立がわざわざ体育館倉庫のことを話しに出すなんて怪しいな。俺は見る目を細めながら何やら機嫌が良さそうな石立について体育館へと向かった。
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