第17話 重い一撃
生徒会室で新イベント会議を行ってから2日後。水蓮寺の提案で、隷属部では新イベントの具体的な競技内容を話し合うことになった。
「じゃあ、今日は隷属部で企画をまとめましょう。みんな準備はいい?」
膨大な奴隷資料を机に勢いよく乗せる水蓮寺。
「はい、大丈夫です!」
それに負けないほど分厚い料理本を大量に机に置く桐葉。これは相当長くなりそうだな……。そして案の定二人で議論は白熱し、3時間後。
「これは凄いわね。ここまで完璧な企画内容とルール設定は見たことないわ。ねえ桐葉ちゃん!」
「はい! まさか遥さんも私と同じくらい準備してたとはびっくりです」
気が付くと黒板には大量の文字が並び、水蓮寺と桐葉が散らかった資料を片付けている最中だった。俺はゆっくりと腰を上げ黒板を掃除しにかかった。
「じゃあ次のイベント会議はこれで行きましょう! みんなお疲れ様~」
「遥、お前は帰らないのか?」
「今日はちゃんと片付けしてから帰るわ。なんたって私は隷属部の部長なんだから!」
俺が黒板に向き合った数分の間に、他の全員は帰る準備を整えていたらしい。しかし水蓮寺は悠斗と桐葉を笑顔で見送るなり、教室の扉を閉める。そして少し苛ついた顔をこちらに向けた。
「一条、ちょっと用事あるんだけどいい?」
「ああ、大丈夫だけど……」
俺は水蓮寺に返答しようとした途端、俺の頬に鋭い痛みが走った。水連寺の強烈な一発。意味が分からない。俺は少し赤くなった顔を抑えて水蓮寺をにらみつける。
「いきなりなんだよ……」
「なんだよ……、じゃないわよ。アンタいったい何を考えてるの?」
「いや別に新イベントの企画のことを考えていたけど」
「嘘。アンタがイベントのことを考えてないことなんて誰でも分かるわよ。もともと暗い顔だけど会議が始まった途端、あんな死んだような顔になるなんて明らかに不自然だわ。なに? 私達に話せないことがあなたにはあるわけ?」
いつも自分のことしか考えていないような態度をとってるくせに、そういうところは鋭いんだな。完全に不意を突かれた俺は自分の中で計画を練り直す。こうなったらここで決めるしかないか。俺は完全に覚悟を決めた。
「ああ、あるさ。でも簡単にお前に言うことはできない。たとえ部長の命令だとしてもだ」
「そう、だけどその言い方だと簡単に言えないだけで、条件をつければ言うかもしれないってことになるんじゃないの?」
「そうだ。俺が言う条件を飲めばお前に重大なことを話す」
さて、こういう時に水蓮寺はどう来るのか。まだ付き合いが浅い俺からすればこいつは予想外のことを平然とやってきそうで恐ろしい。だが、夕日に照らされた水蓮寺はいつもより少しだけ慎ましく見えた。
「……いいわよ。アンタの言うことを聞くのはすっごく嫌だけど今回だけは言う通りにしてあげる。で、条件ってのはなんなの?」
「条件は、お前と俺が新イベントで同じ役割にするように誘導することだ。お前と俺の二人きりになるようにしてほしい」
「私と二人きり? 告白だったらお断りよ」
「告白じゃない。俺はただ水蓮寺と一緒にいないといけないんだ。そうじゃないと俺は……」
俺がそこまで言うと、水蓮寺は深くため息をつく。
「もう! いいわよ。何が何なのか全く分からないけど、その通りにしてあげる。でもこのことは隷属部のみんなには秘密よ。私が一条なんかの言うことを聞いてるなんて知られたら、部長としての立場が無いもの」
いつものように責めるように言葉を繰り出す水蓮寺。しかし気のせいか、今の水蓮寺は頼もしく見えた。俺はその言葉を噛み締める。
「……分かった。これは二人だけの秘密だ」
「はぁ? 調子に乗んな一条っ!」
水蓮寺は顔を真っ赤に染め上げ、大声で威嚇する。その瞬間、俺の腹は会心の一撃に見舞われた。
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