第6話 創部1

「あいつらは……、一体どこにいるんだよっっ!!」


 放課後の旧校舎で、俺は扉を開きながら絶叫していた。、本当にどこに行ったんだ? 焦りで段々と扉を開ける勢いと力が強くなる。数十枚の扉を開けた後、俺はやっと悠斗と水蓮寺を見つけた。


「お前ら……、探したぞ」


「な、なんでアンタがここにいるのよ!」


「一条、お前……」


 旧校舎の端の空き教室にいれば誰にもバレないとでも思っていたのか、案の定、悠斗と水蓮寺は動揺していた。馬鹿な奴らめ、俺の執念をなめてもらっちゃ困るぜ。達成感と適度な疲労感からか、違うベクトルで俺の気分は上昇しているようだった。


「それはこっちの質問だろ。放課後の誰もいない旧校舎で、一体何してるんだ? 取り込み中みたいなら俺はこのまま帰るけど?」


「ち、違う! そんなんじゃないわ。私と悠斗はここで部活を作ろうとしてんのっ!」


 やはりな。俺の予測は間違っていなかった。主人公とヒロインが訳の分からない部活を作るのは、もはやラブコメの運命さだめのようなもの。俺は勝ちを確信して一人笑みを浮かべる。


「部活? それにしては人数が少なすぎると思うんだが。最低五人は部員がいないと正式に部活動として認められないんじゃないか?」


「だから、作ろうとしてるって言ってんでしょ⁉ アンタも冷やかしに来たならさっさと帰ってよ!」


「いや、冷やかしでなんか来てない。俺は今日お前たちの部活に入部しに来たんだ」


「はぁ? ふざけるのもいい加減に……」


「遥!」


 悠斗がいつになく真剣な様子で、水蓮寺を制す。その目は俺を捉えて離さないように鋭く見えた。


「一条はそんなしょうもない嫌がらせをするような奴じゃない。こいつが言うことはいつも本気だ。そうだろ? 一条」


「ああ、そうだ。だが、俺はお前らの部活の内容は全く知らない。まずは活動内容から教えてもらおうか」


「何部かも分からないのに、入部しようって言うの? アンタって本当に……。まあ、いいわ。他に入部してくれる人のあてもないから教えてあげる。その代わりやっぱり入部しないなんてのは許さないからねっ!!」


 なんだかんだ言って部員が欲しかったのか、水蓮寺は仕方ないといった感じで俺に言い放つ。さて、一体こいつらはどんなぶっ飛んだ部活を作ろうとしているんだろう。俺は、もはや不可思議な部活予想に熱中していた。


「私たちが作ろうとしてるのは隷属部! 生徒に付き従うことで活動する、自己犠牲がモットーの部活動よ!」

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