第7話 創部2
いや、無いわ……。俺もいろいろな方向性でのぶっ飛び部活を予想していたが、まさかヒロインがハードコア系部活動をご所望とは意外だった。これまでの変な高揚感を含む感情が全て一掃されて、俺はもはや無感情になっていた。
「なあ、一条。今、お前後悔しただろ。お前からも言ってやってくれよ。この絶望的な部活動について」
テンプレ通りだが、隷属部というトリッキーな部活は水蓮寺の提案らしい。ひとまず状況を整理しておこう。話はそれからだ。
「一応、聞こうか。どうしてお前はこの部活を作ろうと思ったんだ?」
「逆になんでこの部活を作っちゃダメなの? 奉仕活動は良いことでしょ?」
「ならボランティア部とかでいいだろ。こんな過激部活動なんて生徒会から承認されると本気で思ってるのか?」
「ボランティアじゃダメなの! もっとこう……、身も心も捧げるような低姿勢な感じがないと、ワクワクしないじゃないっ!」
ただ部活動のことについて話し合っているだけなのに、水蓮寺の目は信じられないほど光り輝いていた。これはダメだ。どんなに正論を並べたとしても、きっとこいつはパワープレーで押し切って来る。水蓮寺の圧力には俺のコミュ力じゃ絶対に勝てない。俺は違う方法で、水蓮寺を諦めさせることに決めた。
「じゃあ分かったよ。この部活動名で生徒会が承認したら、俺も認めてやる。その代わり、これでダメだったら普通の名前に変えさせるからな!」
「ええ、いいわ。見てなさい。絶対認められるんだから!」
なにを根拠に、こんな自信満々なんだこいつは……。俺は持ってきた部活動申請書に必要事項を書き殴り、生徒会室へと駆け出して行った。
「……ということなんですけど、承認なんてできないですよね? こんな部活動」
「一条君は部活動の申請をしに来たのよね? なんでそんな承認されない前提みたいな感じになってるの?」
やけに広い生徒会室で、先輩はすでに大量の業務をこなして疲れてしまったのか、力が抜けたような呆れ方をした。申請用紙を読み出すと、先輩の表情はさらに厳しくなる。ほら、見ろ。まともな人なら、こんなぶっ飛んだ部活なんて承認する訳ないんだ。さっさと戻って、部活名を考え直さないとな。
「……いいでしょう。生徒会は隷属部を正式な部活動として承認します。」
「へえっ………!!?」
頭から水をかけられたような衝撃で、俺はすっとんきょうな声を上げる。我が高校の生徒会長が、大真面目にイカれた部活動を承認してしまった……。隷属部が……、正式な部活動名なんて………。目の前で起きた異常事態、驚きが去った後の俺はがっくりと肩を落としていた。
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