④
本当は、呪文なんかいらないんだ。そもそもこれはゲームの呪文だし。
でも、景気づけっていうか、自分を奮い立たせるために何かしら言葉を発したかった。
いつか唱えてみたかった呪文だったんだ。だって、その効果は僕の封印されたチカラにそっくりだったから。
“何が起こるかわからない”……僕のチカラは、全力で解放すると、本当に何が起こるか、僕にだってわからないんだ。
周囲のあらゆる術式を誤作動させるのか、眠れる妖怪を呼び起こすのか、僕の傷を治すのか、ナニカが僕を襲うのか。
結論から言うと、それらが同時に起きた。ゲームよりタチが悪い。
石やら砂やら何かの破片がいっぱい飛んできて、気がつくと僕の胸のど真ん中に太い木の枝が深く刺さっていて、少し離れたところで狗狸が弾け飛んで、秋本の周りに大きな火の玉みたいな塊がいっぱいできてそれは沢山たくさん出てきて秋本はあっという間に飲み込まれてしまった。
「っげぇ……」
口からごぼごぼと血がいっぱい出てきてとにかく気持ちが悪くてでも痛みは全然なくてとにかくあの車からアイツを助けないと何とか這って進もうとするんだけど刺さった枝が邪魔ででも抜く力もなくて赤くぼやけていく視界に尻尾が沢山ある猫やら天狗みたいなのやらが僕にどんどん近づいてくる髪の長い女の人が僕の顔を覗きこんできたどこかで会ったことあるような気がするお願いこの枝を抜いてくれませんか邪魔で邪魔でしょうがないんだ封印を解いてはいけないよ力を解放してはいけないよってずっと小さい時に言われたんだすごく危険なことが起こって僕や他の誰かが死ぬかもしれないからだからこんなのは初めてでこの力の止め方もわからなくてどうか匠をたくみを助けてごめんごめんなたくみこんな厄介な異能の持ち主で
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