第3話 2人の出逢い ー 雄太side ー ②
次の日。
今日の桜井さんも綺麗だ。
「桜井さんこれお願いします」
『置いておいて頂けますか』
先輩が下心むき出しで桜井さんに近付いてみるも、全く相手にされず。
むしろ睨まれていると言うか、とにかく先輩の気持ちを考えると居た堪れない。
けれどあの冷たい視線は俺だけに向けられている訳では無いことに、ほっとしてしまっている自分もいた。
ぼーっと桜井さんを見つめていれば、先輩が不機嫌そうにぷんすかと頬を膨らましながら歩いてきた。
「桜井さんって顔は可愛いのに性格きついよな。俺ああ言う子マジ無理だわ」
下心むき出しだった先輩は冷たい態度を取られたことがよほどショックだったのか、あからさまな上から目線で桜井さんに文句を言う。
確かに桜井さんはちょっと怖いけれど、何もそこまで言わなくて良いじゃないか。
なんて、年上の先輩には言えず。
「あの、桜井さん」
お昼休憩。1人屋上のベンチでお弁当を食べる桜井さんを偶然見つけて、声をかけた。
『なんですか』
再び向けられた冷たい視線。なんだかもう、慣れてしまった。
ふと桜井さんのお弁当を覗いてみれば、茶色い冷凍食品やお惣菜がびっしりと詰められていた。
「…もしかして、お料理苦手なんですか?」
恐る恐る問うと、
『…なんでわかったんですか』
と、恥ずかしそうに小さく呟いた。
なぜわかったかなんて、そんなの簡単なこと。
仕事はできなくても、料理や家事は大好きだし大得意からだ。
そんな俺に比べて桜井さんは美人で仕事も完璧なのに、料理は苦手なんだ。
そのギャップが可愛くて、つい笑ってしまった。
『…おかしいですか』
少し不機嫌そうに、でも恥ずかしそうに小さく呟いた。
「いいえ、意外だなって」
桜井さんは料理が苦手。
その小さなギャップを知れただけで、嬉しくて嬉しくて仕方がなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます