多種多様な記録、及び記憶から浮かび上がる、とある魔女の半生とその最期の物語。
壮大な異世界ファンタジーです。「魔女ムーラン・ルージュ」という一存在についてのみ描いた物語でありながら、その存在そのものが「ただの一個人」という枠には収まらないほどに壮大なのが特徴的。
彼女の存在がそのまま物語世界のファンタジー性を丸々担っているところがあり、その全貌が詳らかになっていく過程そのものに面白みがありました。
タイトル通りの導入、処刑判決の主文から始まる冒頭が印象的。
彼女はなにゆえ火炙りに処されるのか、その詳細に興味を惹かれて読み進めるうちに、すっかり物語の世界に取り込まれてしまいます。
提示されているのはあくまでコラージュされた情報の断片であるところも好き。
最終的に全体像は見えても、枝葉末節にはまだぼやけた部分があり、そこが想像の余地となっているような感覚。
尋常の感覚では到底掴みきれないような、異世界の大きさを感じさせてくれる作品でした。