第4話

むかわ町から、苫小牧までだったらそんなに距離はない。

オオダが開いた地図アプリの音声案内従い、車を走らせるミナト。


窓を眺めると海が見えた。

天気と工場地帯とあまり映えはしないが、それでも海を眺めると心は踊る。


海が見える所が故郷な為かオオダは懐かしそうに外を眺めていた。



「今度は、夜にでも来てみようか。

夜の苫小牧の海に行ったことあるんだけど、工場のライトアップが綺麗だったな。」


「いいね。

ただ見るだけだとつまらなさそうだから、釣りとかやってみる?」



濃い青色のような夜空に、白く光る工場。

前に他の友人と一緒に行った時に見た景色は衝撃だった。


ナイトクルージングで、明かりが綺麗な工場を見るのが流行った時期があったが…その理由を理解した。



そんな思い出話をしていると、クラクションを鳴らされた。

教えてくれたのだと思うが信号機の色が青にかわっていた、赤信号から変わってそんなに時間は経ってない。


バックミラーを見ると大型のトラックがそこにいた。




「そんなに時間がたってないんだが、わざわざクラクション鳴らさなくてもいいじゃない!」



先程のラジオの話もあってか、プンスコし始めたオオダ。


色々と思うところはあるが、直ぐに移動できなかった此方にも多少は非があるし今は一車線で追い越せなかったのだ、鳴らすしかない。



だけど急ぐ必要はない、法定速度に従いマイペースに車を走らせるミナト。


しかし、心なしかトラックの車間は狭い。



「あのトラック…もしかして、ウチらを煽ってる?」


「敏感になりすぎ。

仕事で急いでいるんでしょ、法定速度は守ってるから気にしない気にしない。

ドラレコはついてるし…ルールを守った上でぶつけられたらこっちの勝ち。」



寧ろ、ぶつけてくれないかな。

車を買い替える足しにはなりそうだし…。


そんな邪な思いを胸に秘めたミナトを他所に、情に厚いオオダは一人勝手にヒートアップしていた。



「軽自動車だからと舐めやがって。

私にシートベルトを外させるなよ…。」



カチャ…と静かにシートベルトの金具を外したような音を鳴らせた。

横目で見ると、若干…腰を浮かせている。


なんで貴女は、そんな好戦的なのだろう…。



「オオダ、ステイ。」



スン…と、オオダは大人しく従う。

随分と素直な事だが…それでいい。



やっと大きな道が見えて車線が二つに変わる。


急ぐ人が走る車線はどっちだっけか?

そんな事を考えいたミナトだったが、トラックはエンジンの音を響かせて結構な速度で追い越してきた。


大きさが大きさな為に威圧感はどうしても感じる。




「…おん、こっちをチラッと見たぞ。

わざとか…わざとなのか?」


「…ステイ。」



シートベルトの金具をカチャカチャし始めるオオダ。

鉄板が好きな女だ。



このあとは無事に苫小牧に向かって走ることができた。


ホテルで売っている物は基本的に高上がりなのと、本当に欲しい物が売っていない恐れがある。

苫小牧で大きいショッピングモールにミナトは車を止めた。




とはいえ、アメニティーはある。

もしもの為の物はある。


なら欲しい物は、晩酌のお酒と摘みだ。



「主役はししゃも。

とりあえず日本酒でしょ!」



目を輝かせながらカートを押すオオダの姿は彼女が小柄なのも相まって子供のようで愛らしい。


日本酒は彼女の方が詳しい。

他の良さそうなお酒を探そう。



久しぶりの旅行の晩酌だ、ミナトの足取りも軽い。


自分好みの酒をカゴに入れたミナトはオオダと合流する。

しかし、彼女は店員産に絡まれていた。



「未成年のお客様にはお酒は…。」


「ウチは、成人女性です!」



なんてベタなやりとりをしているのだ奴は…。


オオダは、財布の中から免許を取り出して店員に見せ始めた。

彼女の強い意向で内容の詳細は省くが…確かに成人している物と証明している。



国から証明されているのだ疑いようがない。



「し、失礼しました!」


「いえいえ、わかってもらえれば大丈夫ですよ。

そちらもお仕事の一環なので気にしないでください。」



店員は頭を下げて謝罪しその場を後にした。

オオダも分かってもらえれば、気にはしない。


店員さんも仕事なのだからしょうがない、しかし側圧的な男性だった日には…面倒な事になっただろう。


お摘みも、ポテトチップスやチョコ、スルメやジャーキー。

これだけあれば…問題ない。


酒を飲むと口が寂しくなる系成人女性のミナトは、ホクホクしながらレジに向かう。








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