第3話


定食の量は程よく心地よい満腹感に満たされた2人は、腹ごなしがてらししゃもの販売所をうろつく。




むかわのししゃもは、すだれ干しという独自の方法で加工されており普段食べているのはカペリンという別の魚らしい。


ちなみに、生のししゃもは北海道でしか食べられない魚でノドグロやヒラメと並ぶ高級魚だそうだ。

前もって知っていたら、お寿司の感想や気構えがもっと変わっただろうに…。


次からは特産の食べ物くらいは下調べしようと考えながら、店にあるししゃもの説明書きをミナトは眺めた。




ちなみに配送も行っているようで、近郊に限らず北海道じゃなくても問題ないそうだ。

海外は専門外だから知らないけどと豪快に笑いながらオヤジさんが教えてくれた。


お互い一人暮らしの身。

珍しい物だ、別の場所にいる親や祖父祖母に送って親孝行でもしよう。



そう思い、2人は商品を見る。


オスのセット、メスのセット、オスメス両方入っているセット。

折角だから両方入っている奴を購入。



ミナトは祖父祖母に送る為にサラサラと住所を紙に記入する。



〝福島県〟



先に終えたオオダは、ミナトの書いている紙を覗き込む。



「ミナトのじーちゃん、ばーちゃんは道外にいるんだ。」


「そうだよ。

北海道らしいものを送れたから今日は来てよかったよ。」



配送をお願いした2人は店を後にする。



他にもお土産屋のような市場に向かった2人。

野菜やご当地お菓子とあったが、やはり目が行くのはししゃも。



ししゃもの加工品が目に止まる。

各自でししゃもふりかけや、ししゃも塩など個人の土産を見た後は…今夜の酒の肴を探す。



今回の宿は北湯沢。

生の物や加工が必要な物では酒の肴にはできないだろう。

いつになく真剣な表情で、市場内を物色するオオダ。



見事、彼女の目に止まったのは真空された火の通ったししゃもだった。

思っていた物が手に入り、満足げなオオダだったが…彼女に不安が起こる。



むかわ町は温泉も有名らしく、道の駅の直ぐそばにある宿にあるのだが…不幸にも宿が改装中だったのかやっていないようだった。




「温泉…。」


「はいはい、次にいくよ。

ここから北湯沢は結構遠いからね。」



ミナトはしょんぼりするオオダの背中を押して車に戻る。



ちなみに、なぜ離れた場所の北湯沢を選んだ理由は一つ。

宿の特典だ。



「ミナト氏、なめ茸を頂こうぞ。」



彼女のその一言で全てが決まった。

何より行ったことのない場所だから非常に楽しみだ。



途中、ガソリンスタンドが見えたが…いつも行ってるガソリンスタンドではなくてミナトは見逃して進む。




「結構、走ったけど…ガソリン入れんでもぇえの?」



「大丈夫大丈夫。

苫小牧を経由するから、いつも言ってるガソリンスタンドの一つや二つあるでしょう。」



オオダの心配を他所に、ケラケラと笑って答えたミナト。


彼女は昔、苫小牧に住んでいた。


だからこそ、慢心してしまったのだ。

この後怒る悲劇も知らずに。

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