第6話 復讐の数々
俺は、次の行動に移った。
今度は、あの女そっくりに作った人形を、無残な姿にしてあちこちの場所へ放り捨てた。
学校の前に、屋敷の前に、通学路の真ん中に。
これにはさすがに、「友人のふりをして妹をはめた非道な女でも」気味悪く思ったらしい。
友人達にしきりに、「犯人は何のつもりなのかしら」と相談していたようだ。
指名手配がかかったが、犯人の容姿すらわかっていないようなので、行動に制限はかからなかった。
あの女は、自分そっくりの人形を壊される事が頻発した影響で、不気味な悪夢を見るようになったらしい。
いい気味だった。
一度はあの女の家族の前に、壊れた人形を捨ててきた。
家族と旅行でもするところだったのだろう。
玄関を出た所で人形の姿を一目見たあの女が、悲鳴を上げて腰を抜かすさまを見た。
けれど、すぐさま家族に労られるその姿を見て、憎々しさがこみあげてくる。
妹はもう家族に会えないというのに。
みっともない姿を見せて、家族に愛想を尽かされてしまえばいいと思ったのに。
あんな性格女でも、家族に愛されていたのが余計憎らしくなった。
だから怒りをぶつけるように、次の手を変える事にした。
今度は趣向を凝らして、処刑道具や凶悪な動物を複製して、あの女に送りつける事にした。
大きなダメージにはならなかったようだが、矢継ぎ早に行われる嫌がらせを目にして、平気でいられる人間などいない。
あの女は、時々気が触れたように「何のつもりでこんな事するの! 私が何したって言うのよ!」とあらぬ場所を向いて叫んでいた。
その視線の先には当然何もない。
周りの人間は、気が触れたのだと思ってあの女から距離を置き始めた。
あの女は、一人でいる時間が多くなったようだ。
誰も寄り付かなくなった事でやつの心をケアをする者はいなくなった。
唯一あの女の両親だけが、医者を付けたが、俺がする嫌がらせでみな辞めていった。
そして最後は、今までとは真逆の行いをすることにした。
あの女の人形に善行を積ませて、たくさんの人達を助けさせたのだ。
一見すると愚かしい行為にしか見えないが、これにもちゃんと思惑がある。
それは後々語ろう。
人形は、多くの人を助けた。
病に苦しむ村に薬を届けさせたり、荒れ狂う川の氾濫で流された者達を助けたり。
どれも普通の人間にはできない行動だ。
人形だから、病に感染しなかったし、川の水を飲まずにすんだ。
そんな事も知らない者達は、本物の人間が助けてくれたのだと思って、感謝していたが。
一度は、邪神呼ばわりされていた子供を、顔に火傷を負った少年を、助ける事もやった。
完全におまけのような善行だったが、見て見ぬ振りができなかったのだ。
昔の自分と重なってしまったのだろう。
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