第7話 復讐の終わり



 数々の嫌がらせを行う間に、約一年の月日が流れていった。


 だが、時間をかけただけはあったようだ。


 フォアルドは、みるみる憔悴していって、もはや正気とは呼べなまでになった。


 後はいよいよ、詰めの大仕事だ。


 聖人とあだ名がつくまでになった人形を操り、本物を断罪することにした。


「自分の偽物が悪行を行っている」「自分と同じ見た目の人間が、我が物顔で弱者を踏みつけながら生きている」だとなじる事にした。


 聖人と呼ばれるまでになった人形は、ファルドが行った数々の嫌がらせを、人々の前で次々と告白していった。


 全部本当の話だ。


 話題に困らなくて助かった。


 その話の中には、当然妹のユフィの話もまぜておいた。


 これで少しは妹も浮かばれるだろうか。


 偽物の断罪話を聞いた人々は、人形の言葉を信じ切ったようだ。


 自分を助けてくれた存在と、そんな聖人を騙る偽物。


 耳を貸すなら、前者に決まっている。


 人形の言葉に惑わされた人々は、本物の方を攻撃し始めた。


 フィアルドの家に殺到し、あの女を引きずり出そうと行動する。


 その中には、気まぐれで助けた火傷の少年もいた。


 その子供も、石を持って屋敷へ投げていた。


「どうしてこんなバカな事をするのよ、私の方が本物なのに!」


 と叫ぶあの女は、一時的にショックで正気に戻ったのか、屋敷の奥に閉じこもって泣き叫んでいた。


 その屋敷には、両親も使用人もいない。


 フィアルドにより一層の孤独を感じてもらおうために、偽の情報で事前におびき出していたからだ。

 手間もかかったし、だいぶ苦労したが。

 どうにか舞台はととのった。


 後からその者達が騒動に気が付いても、もう遅い。


 あの女を守るものは、屋敷以外なにもなかった。


 しかし、その屋敷も怒り狂う者達の前では無力に等しい。


 押し寄せる人々は屋敷を壊し、あの女の元までたどり着いた。


「私のせいじゃない」「私は何もやっていない!」「どうしてこんな仕打ちをうけなければならないの!」


 喚き散らし怯えるあの女は、憤る人々の手に断罪され、あっけなく命を落とした。


 最後にフィアルドにとどめを刺したのは、あの火傷の少年だった。


 ナイフで心臓を一突き。


 それで、終わりだ。




 

 これで、復讐は終了だ。


 もう生きる意味はなくなった。


 妹の死はあの女のせいだったが、俺が邪神であったがために不幸になった人もいる。


 だから、俺も妹の後を追おうと考えていた。


 けれど、死に場所くらいは自分で選びたい。


 だから、最後に家族皆で旅行に行った観光地まで足を運んでみようと思った。


 もう二度と本物は見られないけれど。


 せめて幻想でも、頭の中に妹の笑顔を思い浮かべたかったからだ。


 あの幸せだった頃の思い出を胸に抱いて、この世を去ろう。




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