第4話 追い詰められた妹



 可哀そうな妹の姿を目撃してしまった後、俺は思った。


 妹をこんな目に遭わせた連中に復讐しなければならない、と。


 さらに情報を集めた俺は、犯人の名前が分かった。


 フィアルド・ティ―クス。


 嫌がらせの張本人は、妹と同じ教室にいる女子生徒だ。


 カリスマ的存在で、同じ教室にいる生徒達の弱みを握って、他の者達を支配しているのだとか。


 反抗しようにも、フィアルドの家の力が大きすぎて、誰も逆らえないらしい。


 そんな事情があるから、妹に味方する人間が誰もいなかったのだろう。


 俺の目に映っている間。嫌がらせを受けている妹は、いつも一人だった。







 フィアルドの事は前々から認識していた。


 社交界に出ている時、よく妹の近くにいたからだ。


 けれど、彼女のまなざしは他の人間とはどこか違う。


 他の友人達にまざって妹を見つめながらも、どこか冷めた視線を注いでいた。そんな少女だったのだ。


 前々からおかしいと思う要素はあった。小さくとも見逃せない点があったというのに。

 それなのに、その人物に気が付かなかった事に悔いた。


 妹への嫌がらせをすぐにやめさせなければ、と思ったが。


 しかし、その決断は遅かった。


 俺が目を離した隙に、妹は多くの生徒の前でありもしない行為をでっちあげられて断罪され、学園から追放されてしまったからだ。


 教師達すらも妹の味方ではなかった。


 除籍処分の発言を聞かされた妹は、断罪場所である教室から逃げ出したらしい。


 その内容は、一部を思い返すだけでも、はらわたがにえくりかえりそうだった。


 特に。


 フィアルドの彼氏を卑怯な手で略奪した。


 体を使って多くの男子生徒を誘惑した。


 などという話は、もう二度と耳に入れたくなかった。


 楽しい思い出がつまった学園に、これから通う事ができなくなったのがショックだったのだろうか。


 そのすぐ後、妹は校舎の屋上から身を投げて死んでしまった。


 遺体のポケットから見つかった遺書には、俺や両親にたいする謝罪が書かれていた。


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