第3話 妹への嫌がらせ
俺は妹を守る。そう決意した。
でもだからこそ、妹をはめたあの女が気に食わなかった。
変化はやってきた。
それは妹が、貴族の多くが入れられる名門学校ホープソルト学園に入学した後の事だ。
他の友人達にまざって友達面をして近づき、妹に嫌がらせをしていた女がいた。
俺は、妹の変化にすぐに気がついた。
確か学校に通い始めてから二、三か月ほどが経った頃だっただろうか。
明るかった妹の表情が徐々に暗くなっていった。
だから、俺は当然その理由を妹に尋ねたのだが。
『学校で何かあったのか?』
『いいえ、大丈夫ですわ。お兄様』
『最近学校ですれ違っても、挨拶してくれないじゃないか』
『あっ、お兄様の事気が付きませんでしたわ。ごめんなさい』
『下を向いていたからだろ? 謝ってほしいわけじゃない、理由を教えてほしいんだ』
『それは、言えません。ごめんなさいお兄様』
何度も何度も暗い顔をする妹に、学校で何があったのかと問いただした。けれど、余計な心配をかけたくないと考えたのか、妹は何も相談してくれなかった。
だから俺は悪いと思いながらも、校内で妹の動向に目を光らせる事にしたのだ。
監視するような真似をしてしまった事には罪悪感を感じたが、俺の行動は事実をつかみとる事に貢献したようだった。
妹はどうやら誰かに嫌がらせをされているらしい。
机の中にゴミや虫を入れられたり、持ち物を壊されたり、隠されたりしていた。
俺が見ている範囲で、それだけの嫌がらせがあったのだから、知らない所ではもっと多かったのだろう。
これまでの気がつかなかった期間を考えると、胸が痛くなった。
それを行っている犯人は、妹と同性の人間だ。
更衣室などの、同性でなければ入れない場所に入っていった妹が、水をかぶって出てきたのだから。
間違いないだろう。
ずぶぬれになった妹が、泣きながら部屋を出てきたとき、俺は妹に駆け寄るべきか悩んだ。
その肩を抱いて慰めてやるべきか、分からなかった。
けれど、行動に移さなかった。
全てを終えてから、そうするべきだとその時は思ったのだ。
これまで俺に何も言わなかった妹の気持ちを考えたら、あの時顔を見せることなどできなかったのだ。
けれど、結果を見ればそれは間違いだったのだろう。
この時の俺は分からなかった事だが。
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