第2話 ユフィー・ジャックノーツ
俺がジャックノーツ家にひきとられてから、数年たった頃。
妹が誕生した。
小さな生き物が母親の腕に抱かれている光景は、今でも鮮明に思い出せる。
妹の名前は、ユフィー・ジャックノーツ。
愛称はユフィだ。
忙しい両親の代わりに、ユフィの世話をすることが多かったから。俺は妹によくなつかれた。
どこに行くにも後ろをついてきたし、何かをする時はそのしぐさや行動をよく真似された。
俺の姿が見えなくなると「お兄ちゃんどこ?」と言って、泣かれたし。
高い場所の所に手を伸ばしては、「お兄ちゃんみたいにとれない」といって泣かれた。
なかなかよく手間のかかる妹だった。
大きくなってからは次第にしっかりしてきたけれども。
いっしょにいる時間が長かった影響か、大きくなってからも妹はよく俺に話しかけてくる。
『お兄様お兄様っ、今日は一緒に遊べるんですよねっ?』
『昔みたいに言わないのかって? もう大きくなったんだから、お兄ちゃんなんて言いませんっ!』
『お兄様っ、お勉強で分からない所があるんです。教えてくださいませんか?』
いつも元気で朗らかな妹だから、そんなユフィと一緒にいると、俺まで元気になった。
そんな妹は、いつも多くの友人に囲まれていた。
社交界に出ても、学校に通っていても、いつも妹の周りには大勢の人間がいる。
俺は、そんな妹の足手まといにならないか心配だった。
特に俺は、見た目が特殊だから。
その懸念はすぐに現実になった。
俺の見た目が、例によって邪神を思い起こさせる容姿だったために、ジャックノーツ家の人間と同じ血を引いてないんじゃないかと、馬鹿にされるようになったのだ。
けれど、事実はその通りだから、言い返す事ができなかった。
両親は俺を養子にしたことを隠していたから、そうなるのは当然だっただろうが。
けれどそんな事が起こるたびに、妹が彼等に向けて言い放つのだ。
『お兄様を侮辱しないでください! 何があろうと、お兄様は私のお兄様です。私の大好きな人を馬鹿にしないでください!』と。
妹は貴族の娘として、血を後継者へ受け継ぐことに大切さは知っている。
けれど、それ以上に重要なものがあるのだと、妹は述べた。
『お兄様、何があっても私達は家族なんですから。あんな言葉に傷つかなくても良いんですよ』
俺は妹のその優しさに救われていた。
この宝物のような妹をずっと守っていこうと、そう思っていた。
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