第20話 第三王子様が○○だった件
「…921…922…923…」
朝の日差しが心地よい朝です。
「950…951…952…」
今日も尻尾がもふもふです。いつもはもっと惰眠をむさぼっていたのですが、流石に気まずいので起きましょう。
「…997…998…999…1000!」
窓を開けてベランダから下を見るとルディアちゃんが朝の稽古をしています。ルディアちゃんの背丈より大きな鉄の大盾に正拳突きを叩き込んでいます。大分ボコボコにへこんでいるけど、素手でへこむものなのだろうか?
ルディアちゃんが家族に加わってから二週間、毎日は頑張っています。
「あ!ミーアちゃんおはよう!」
「うん、おはようルディアちゃん今日も頑張ってるね」
「もちろんだよ、もっともっと頑張るよー、あっ!そろそろ朝食の準備手伝う時間だから行くねー、ご飯出来たら呼びに行くからまだ寝てても大丈夫だよー」
「……あー、うん……わかった……」
私はダメな子だなー、ルディアちゃんは朝早くから稽古して、朝ごはん手伝って、また稽古して、勉強して、稽古して。
一緒に同じ部屋の同じベッドで寝てるけど、私より先に寝たことも、 私より遅く起きたことがない、
最初は別の部屋を使ってもらうはずだったけど、ルディアちゃんが断ったんだよね。
「ミーアちゃんと守るのはわたしの役目、その為には同じ部屋で寝て、一緒にお風呂に入る必要がある」と部屋を貰うのを遠慮していたなー、本当に良い子だ。
私も魔術の練習しようかな、朝ごはんを食べてからね。
◇◆◇◆
「水の精霊たちよ、我願う奇跡の力を顕現させたまえ、ウォーターボール 」
水の玉を作り出す、大きさはバレーボールくらいです。弾性を持たせて本物のボールみたいに玉突きします。維持するのが地味に大変です。
お母さんとルディアちゃんは模擬戦中です。2人とも光ってるけど、動きもぶれて良く見えないけど、地面が割れたり、岩が砕けたりしてるけど模擬戦でいいんだよね?
「お邪魔します、失礼ですがこちらの家の方でしょうか?」
私と同じくらいの男の子が声をかけてきました。
「はい、そうですよ」
「私は第三王子ランゼル様の使いの者です、町長にお会いしたいのですが取り次いでいただけますか?」
「お父さんに?分かりました聞いてきますね」
広めの応接間にお父さんお母さん私とルディアちゃん、王子様とさっきの使いの人が集まりました。なぜに全員集合なのでしょう?
「さて皆さん集まって頂きありがとうございます。第三王子のランゼルと申します。せっかくなので皆さんに聞いてほしいと思いましてね」
「ふむ、ご用件を伺いましょう」
「単刀直入に申し上げます。娘のミーア嬢を花嫁にしたいのです」
堂々とそんなことを言ってきた。花嫁?お嫁さん?初めて会った人と?
「ふむ、なぁエリナ私の愛刀はどこにおいたかな?」
「あらあらあなたダメよ、こういうときは塩とお茶漬けでしょ?」
「師匠、わたしが殺りますね」
3人の殺気が凄まじいです。
「なにか問題がありますか?」
「どこの馬の骨とも分からん奴に娘はやれん!!」
お父さんこの人第三王子様だよ!
「どこの第三王子様だか分からん奴に娘はやれん」
お父さんこの国のだよ!
「では妹としてミーア嬢を迎えたい」
「師匠、もう殺って良いですか?」
「ミーア嬢とお出掛けしたり話したり手紙のやり取りしたい妹として」
「ならば姉のアイナと結婚すればよかろう」
「それもそうですね、ではアイナ嬢と婚約しましょう」
「ならば好きにするがいい、出来るものならな」
良いの!?お姉ちゃんに無断で?
「それでシスコン王子様は何しに来たんだね?」
「もちろんミーア嬢が嫁に、又は妹に迎えたいと言うのは本音ですよ、ミーア嬢に見てもらいたい物がありましてね」
「何ですか?見てもらいたい物って?」
「あぁ、これさ」
王子様が取り出したのはきつねのぬいぐるみだった。
「そ、それは、まさか」
「きつねのゴン太くんですよ」
「なぜ、あなたがそれを持っているのですか?」
「その質問に答えるためには、2人きりになる必要がありますね、宜しいでしょうか?」
話を聞くには仕方ない、少々ごねられたがみんなには待ってもらって、私と王子様は私の部屋に向かった。
「さて、それではさっきの質問に答えてください」
「これは、俺が作った、前世の俺が作った物と同じきつねのぬいぐるみ、お前の為に作った世界で1つだけのぬいぐるみだ」
「まさかとは思ったけど、やっぱりお兄ちゃんなんだね」
「あぁ、きつねの死神に会ってな、お前が転生したこの世界に、俺も転生させてもらったんだよ」
「どうして……お兄ちゃんは転生しちゃたの、私と違って健康だったよね」
「……お前の後を追って、病院の屋上から飛び降りた」
「なんで!?私はお兄ちゃんに生きていて欲しかったよ、私の分まで幸せになって欲しかったよ!」
「ごめんな、俺にはお前の居ない世界は耐えられなかったんだ、
でもこの世界にお前が転生したと聞いて今度こそ幸せにしてあげたいと思ってずっと探してたんだよ」
「私の方が先に死んじゃたし、偉そうな事は言えないけど、ここに住んでるって良く分かったね、ぬいぐるみまで作ってたし」
「あぁ苦労したぞ、死神にどこにいるか確認出来なかったんでな、手当たり次第に女に声をかけて確認したんだ、108人確認した、ここの情報はオセロやジェンガを発明した奴がいると聞いたからさ、ミーアに会った瞬間に確信したけどね」
「お兄ちゃん、今何歳なの?」
「んっ?ミーアと同じ5歳だよ」
……第三王子様がお兄ちゃんで5歳ですでに108人に妹確認してる件について。
「まぁいいや、それでなんで結婚する話に繋がるの?」
「そりゃあ、今の俺は王子様だからね、同じ年だし結婚して幸せにしてあげたいと思ってたんだよ、けどあの反応でちゃんと愛されていることが分かったからね、姉と結婚して妹として見守るのも良いと考えたんだよ、ナイスアイデアだろ」
「……まぁ直ぐにどうこうならないだろうから良いかな」
こうして私はお兄ちゃんと世界を越えて再会しました。そして定期的に文通することになりました。
今日の夕飯は大盛りのお茶漬けでした。
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