第14話 はじめての○○

 ルディアちゃんの指さす方向に目を向けると、そこには確かに黒い炎に包まれた何かがいた。

 怖い、怖い怖い怖い怖い

 恐怖で体が動かない、黒い炎から目が離せない。ゆっくりと近づいてきている。逃げなきゃ、早く逃げないと死ぬ、た、たすけて

「お姉ちゃん、お兄ちゃん」


「「ミーアに近寄るなバカヤローー!!」」

「氷術!」「土術!」

 氷の塊と岩の塊が黒い炎に直撃する。

「お姉ちゃん!お兄ちゃん!」

「ミーア、ルディアちゃん無事ね!リオン何なのあれ魔物?」

「わからない、知ってる魔物とはかなり毛色が違うように感じる」

「とにかく、早くここから逃…げ…」


 黒い炎は先程の攻撃が無かったかのようにそこにいた。黒い炎が形を変えて四足歩行の何かに変化した、全身に黒い炎を纏っている。


「…るのは厳しそうね」

「僕たちが足止めする!ミーア!ルディアちゃんを連れて逃げるんだ!いくぞアイナ!」

「えぇ行くわよリオン!」

「土術『ドーム』」「氷術『ブリザード』」

 黒い炎の周りを土術で覆い、内部に氷術を使っている。今のうちに逃げなきゃ、私はルディアの手を取り走り出す。


 ドガガガガァ!!!!


 爆発音が響きわたる。あの魔術が破られたの?振り返ると黒い炎がこちらに迫ってきていた。


「ミーアちゃん!」


 ミーアちゃんに突き飛ばされる、

 世界がスローモーションに見える、

 ルディアちゃんが黒い炎に体当たりされて放物線を描き吹き飛ばされ湖に落ちていった。


「ル、ルディアちゃーーん!!」


 黒い炎はこちらを振り向き更に体当たりするべく加速する。


 もう…ダメ…。


(諦めないで)


 だれ!?


(思い出して)


 思い出す?なにを?


(勇気のことば)


 ことば……


「勇気100倍、元気100倍」


 その瞬間、光が辺りを包み込み、世界が朝のように光輝く。光の柱が天を貫いた。

 光の柱が収まるとそこにはミーアが光輝いていた。金色に輝く九本の尻尾をなびかせて。


「コレ…ハ…チカラが…ワイテくる…」


「オマエはジャマだ…キエロ…天術『雷神』」


 天と地が裂け黒い炎は真っ二つになり消えていった。


「ハヤク…ルディアちゃんをタスケないと」


 今なら何でも出来る、私は湖に飛び込んだ。


 水中でルディアちゃんを探すと場所が手に取るように分かる、気絶しているのか沈んでいっている、急がないと、水を掴むように進める、まるで魚雷の様に推進力がある、呼吸もまったく苦しくない。

 ルディアちゃんを抱えるとすぐに浮上する。


「ルディアちゃんキコエル!ルディアちゃんメをアケテ!」


「…ミーア…ちゃん?…よかっ…た、ぶじ…だったん…だね」


「ルディアちゃんのオカゲだよ!アリガトウ、ルディアちゃん」


「すごく…きれい…かみさま…みたい…だ…ね」


「ルディアちゃんルディアちゃんルディアちゃん」


「ごめ…んね…わた…し…いっしょ…に…がっこう…いけな…い…みたい」


「イヤ!シなないで!ワタシをオイテイカナイデ!」


「あ…が…と…う…ミ…ア…ちゃ………。」


「ルディアちゃん?」


「…………。」


「イ…ヤ…イヤだよ!ルディアちゃん!」


 死なせない!私の全てをあげるから死んじゃだめ!

 九本全ての尻尾を切り離し、光へと変える。


「天秘術『 』」


 私はルディアちゃんに口づけをした。光の柱が天を貫いた。









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