第10話 ???
俺の名前は???、俺には歳の離れた妹がいる、……いや、いた。
とても可愛い妹は死んでしまった。今、俺の手の中にある小さな容器には妹の遺灰が入っている。
妹はずっと病気で闘病生活をしていた。病院があいつの世界の全てだった。
いつか元気になったら、旅行に行きたいと言っていた。
いつか元気になったら、たくさん美味しい物が食べたいと言っていた。
いつか元気になったら、学校に行って、勉強して、運動して、友達と遊びたいと言っていた。
俺は妹の為に世界の観光地を調べた、観光名所、特産品、名物料理。
俺は妹の為に料理も覚えた、和食、洋食、中華、世界の料理を作れるようにした。
いつか元気になったら、一緒に旅行に行けるように。
いつか元気になったら、美味しい料理を食べさせてあげる為に。
いつか……。
いつかは来なかった……。
俺はいま、妹のいた病院の屋上にいる、天気は嵐、雷も鳴り、近くに落ちている。
おかげで俺の涙も声も誰にも気付かれない。
死ぬには良い条件だ。これで妹の所に行ける。フェンスを越え屋上の端に立つ、目を閉じ体を前に倒す。
あぁ、今から会いに行くからな…み…ぃ…。
(貴方には協力者になってもらいます)
……目を開けると、そこは何もない白い空間だった。ただそこには明らかに異質な物体がいた。黒い炎で形作られた狐、尻尾?が9本あるから九尾ってやつか?妹が狐好きだからいつの間にか俺も詳しくなったものだ。
「そうか、死神はこんな感じか、妹の好きな狐に連れていかれるなら良いか」
(死神……ある意味合っていますね。少なくともこの世界での貴方は死ぬのですから)
「この世界だと?」
(えぇ、この世界で死に別の世界で生まれ変わってもらいます)
「断る!妹が居ない世界に用は無い!」
(その妹が生まれ変わった世界だと言ったらどうしますか?)
「なんだと?妹が生まれ変わった?」
(私が送り出しましたからね。狐人族になれると聞いて喜んでましたよ。貴方も狐お好きでしょう?)
「狐人族?狐耳人間か、確かにあいつなら食いつくな。俺も好きにはなったが、その世界に俺も送ると?」
(えぇ、貴方も狐人族として生まれ変わってもらいます。そして私に協力してもらいたいのです)
「俺としては妹の側にいられるなら構わないが、あいつを護れる力も欲しいな、で何をしたら良いんだ?先に言っておくが妹が危険になることならお断りだぞ?」
(もちろんです。妹さんは安全ですよ。それに貴方には妹さんを護れるだけの能力を差し上げましょう。私の願いはまさしく妹さんの側にいてもらうことなのですからね)
「側にいるだけだと?そんなこと言われなくてもするさ」
(では交渉成立ですね。新しい人生を楽しんで下さいね)
「ちょっ…まだ………。」
(行ってらっしゃい、妹さんは安全ですよ何せ大事な種ですからね、大切に育てないと。……私もきつね大好きなのですよ、他の種族を滅ぼしたいくらいね……。)
白い空間は黒く染まるのだった。
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