第5話 魔法使いVSロボットニンジャ

「クソッ!」


 慧矢は爆弾を絡めとろうと、右の掌から青いロープを繰り出した。避けたとしても爆風に巻き込まれる、と瞬時に判断したからだ。

 しかし、ロープは爆弾を捉えることができなかった。黒い筒はそのまま落下してくる。このままでは爆弾が地面に着弾し、爆発に巻き込まれて二人ともこの世からおさらばだ。


「ま、まずいっ!」


 前に出た優樹が、落ちてくる爆弾に向かって右手をかざした。すると、先ほどニンジャを吹き飛ばしたのと同じように、爆弾も弾かれるように吹き飛ばされた。爆弾は校庭の真ん中辺りに落下し、そのまま爆発を起こした。優樹の魔法が、またしても二人の窮地を救ったのだ。


「今だっ!」


 次は慧矢が、再び青いロープを繰り出した。今度は屋上のロボットニンジャを直接たたき落とそうと、ロープを鞭のようにしならせている。ニンジャは容姿に違わぬ軽い身のこなしで飛び跳ね、ロープを回避しながら校舎の屋上から体育館の屋上へと飛び移った。

 だが、飛び移った先の頭上に、次なる攻撃が待ち構えていた。

 体育館上空に、突如として突風が吹き寄せた。それはあっという間に空気の渦を形成し、着地したばかりのニンジャの体を煽りに煽って、上空へと巻き上げてしまった。


「ユウ、竜巻まで出せるのか」

「……魔法の使い方、少しは分かってきたかも」

 

 竜巻を繰り出す際、優樹は頭の中で強風が吹き寄せ、それが渦を巻く様子を思い浮かべた。魔法を使うにはイメージが大事なのだ、と、ユウもおぼろげながらに感覚を掴んだのだ。

 二人は夜空の流れ星を眺めるように、飛ばされていくニンジャを目で追っていた。空高く巻き上げられれば、落下時の衝撃で破壊されるであろう。

 勝利を確信した二人……だが、敵はそう易々と敗れてはくれなかった。いつの間にか、空には大きな凧があがっていて、ロボットニンジャはそれに張りついて宙を浮いていた。流石はロボットニンジャ、何でもありである。


「そんな目立つもんで飛ぼうなんて、撃ち落としてくれって言ってるもんだぜ」


 慧矢は、これぞ好機とばかりに足元に転がるサッカーボールを蹴り上げた。するとサッカーボールは空中で瞬時に鉛色の杭のような形に変形し、大凧に張りつくニンジャの胸を穿った。大凧はひらひらと舞い落ちて、校庭の南の方へと落下した。

 このボールは、ロボットニンジャの襲撃を見越した慧矢が、あらかじめ体育倉庫のサッカーボールの中に一つだけ紛れ込ませていた魔法道具マジカル・マテリアルであった。このボールは慧矢の魔力に反応して形を変える性質を持っており、慧矢は蹴り上げた時に足を通じて魔力を流し、空中で杭に変化させたのである。事前にこうした備えをしておく辺り、慧矢という少年はしたたかで抜け目ない。

 

「やった……か」


 慧矢は確認のために、大凧の落下地点へと駆け寄った。その先にあったもの……それを見て、慧矢は絶句した。


「か、変わり身の術だと!?」


 そこにあったのは、穴のあいた大凧とそれに括りつけられた丸太であった。あのロボットニンジャの姿はどこにもない。大凧の術の次は、変わり身の術を披露したのである。


「じゃあ本物はどこに……?」


 視線を周囲に巡らせて敵の姿を探し求めた優樹は、すぐに自分たちが窮地に置かれていることに気づいた。


「マホウツカイ、コロスベシ」


 ――二人を取り囲む、五体のロボットニンジャ。無機質な合成音声を発する殺人機械は、一斉に手裏剣を投げてきた。

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