第41話 神殺し


 時間停止が終わり、また俺が時間停止をやる。


 俺がやらなくてもいいんだが、俺がやらなかったらシャリルが空間に傷を付けて時間停止するだろう。


 飛び道具が時間停止に弱いというのは、俺が勇者に放った剣でここの全員が知っている状態だ。


 時間停止のさい、時間停止のスキルを使って、再度空間に傷を付ける事は不可能だった。


 で、飛び道具を使っている奴はシャリルしかいない。時間停止中は矢を撃っても止まらない。


 時間再開後に矢を撃って、時間停止をすれば矢は止まる。矢が止まれば俺にとっては絶好の隙になる。


 平等に時間停止が三人とも使えるわけで、シャリルがやるぐらいなら俺がやろうと言うわけだ。


 二回時間停止を体験したら空間の傷からだいたいの時間が計れる。



 神器も奪った、俺は杖で回復もした。何で退かないんだ? 圧倒的な有利から、段々と追い詰められているのに、なんで?


 退いても、逃げられないは逃げられないが、気色悪い感覚だ。


 勇者の馬鹿はまだ勝てる気でいる。だが、シャリルの考えが読めない。




 まず勇者をやる。


 剣をシャリル放り、俺は勇者の懐へ入る。


 シャリルは俺の行動を読んでいたのか、俺の頭に軌道を描き、飛んでくる。しかも光の矢のスピードが段違いに上がっている。


 ここまでのは本気じゃなかったと言うことか。


 光速の矢に避けられないと腹を括り、光の矢は頭を貫いた。


 パンッと、風船のように何かが弾けたような音がした。


 俺の目の前の勇者の頭が無くなって、勇者だった物は吹き飛ばされた。


 神器単体ではチェンジ魔法は使えなくて、神器持っている奴には効果がある、と。危なかった。


「レクシアじゃないけど、レクシアの顔を潰せたと考えれば、プラマイゼロよね」

「神の頃の俺に随分な良いようだな」

「あら、自分が神だったと知っていたの? テトナと一緒に居て、テトナが黙っている方が可笑しいか。私は貴方を信頼していたのに煮え湯を飲まされたわ」


「あのレクシアの剣の詳細は伝えてなかったと言う奴か」

「知っていたの? そうよ、レクシアはその神の力でも十分強かったの。全能の力に隠された力があるなんて、想定外。神の力が奪われて人に成り下がるなんて屈辱はもううんざりよ」


 あぁ、退けなかったんじゃない、この女は退かなかったのか。


 人でいることが耐えられなかったんだ。


「貴方のスキルは入れ替えね。空間の力の劣化じゃない。私を入れ替えてたら弾き返して、その勇者みたいに貴方がなっていた。勇者を連れて来たのは少し軽率だったかも」


 俺は顔が無くなって吹き飛ばされた勇者を見る。


 俺が殺してやりたかったが、しょうがない。お前がいたから俺が助かったんだ。最後の最後に役に立ったな。



 俺は勇者が落とした時間停止の剣を手に取ると、勇者が落としたもう一つの神器。テトナータの刀とチェンジする。


 ほぅ、神器と神器は単体でもチェンジ出来るのか。


 刀をポーチに入れて、また時間停止の剣を地面から取る。



 光の矢は凄い速度だった。見えるから感じるに切り替えてもギリギリだった。


 あれは避けるという次元にはいない。


 光速の矢か。これを最初から狙っていたのか。


「あぁ、その軽率な判断に助けられたみたいだな」

「認めるの? 貴方が私よりも下だって」

「最初から認めているだろう。ところで半人前になった感想はどうだ」


 は? と不機嫌な声を出すシャリル。


「何が半人前よ。私は力を人並みに合わせていたのよ! 神の力に引き上げた今、貴方なんか相手にならない」


 そうか。


 俺は時間停止の剣もポーチに入れて、ポーチも外して、シャリルに投げる。シャリルはポーチをキャッチする。


 レクシアの剣は逃げられないように持ってないと行けないが。


 レクシアの剣を空中で離して、持つと、時間停止が解除される。


「何をしている?」


 シャリルは心底分からないといった顔をして、俺に問い掛けてくる。


「わかんないかな。半人前な神とどうしたら力が俺の方が下になるかと思って。あぁ、レクシアの剣はお前が逃げ出さない為に持っているだけだから、時間停止でも、空間移動でも使っていいぞ。俺はお前が逃げる行動をした時しか神の力は使わないから」


「貴方、後悔しますよ」

「ごめんな、これだけやってもまだ……俺の方が上だわ」


 そう言った瞬間にシャリルが見えない程の沢山の光の矢が展開されていた。


 半人前の神殺しを始めようか。




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