第36話 空間の罠
お兄様はどこですかね? テトナちゃんと一緒にいると思ったのですが。
勇者の佐藤さんが時間を止めたみたいですけど、私の盾が防いだみたいです。
テトナちゃんとお兄様が困るかもと思いましたのに、テトナちゃんは気絶、お兄様は……分からないです。
私が来なかったら、お兄様の剣も取られて、テトナちゃんも殺されて、間一髪でしたね。危なかったです。
お兄様が私の探知に引っ掛からないとなると、テトナちゃんがお兄様に結界を張って探されないようにしているんですね。
で、そのテトナちゃんは気絶して倒れている。身体はボロボロだった。綺麗だった羽根も奪われて。
「ラクゼリア、私と協力して神の力を取り返そう」
「昔の名で呼ばないでください。私は今はノエルです。貴女と協力なんて、すると思いますか?」
シャリルさんが神の力を取り返すことを目標に、テトナちゃんを殺そうとしていた。
「テトナちゃんを殺して、殺した後に神の血を飲んだって神の力が回復しませんよ。お兄様のスキルは全能の消去です。分け与えて、無に返します」
神を殺して、神の血を飲むと神性が増す。それは本当だけど、神性がないのに神の血を取り込んだところで、意味は無い。
「シャリルさん、何をしても永遠に復活しない。全知の役割を持つ私が証明します」
全知の私は本当のことしか言わない。それはシャリルさんも分かっているから、一歩二歩と後ろへ退く。
「嘘! 嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ、嘘だ!」
ブンブンと頭を振り回して、シャリルさんは嘘を連呼する。
「ラクゼリアは嘘をついている!」
私の真実じゃ、シャリルさんはもう戻る事はなさそうです。
「私の名前はノエルと呼んでください」
「血が足りないんだ、まだ私には神性が残っているはずだ! 私は特別なんだ!」
自己中の叫び。
「シャリルさんと勇者の佐藤さんは似ていますね」
「この下等種が私に似ているだと」
「はい、そっくりです」
私はお兄様の剣を取り、テトナちゃんを守るように前へ出ます。
そして盾をプーメランのように投げて、地面に刺さっている光の矢を折ります。
テトナちゃんは地面に刺さっている矢を無視していましたが、光の矢が何故消えていないのかを考えた方が良かったですね。
でもさすがシャリルさんです。私は見ていないですが、どうせ地面に刺さっている矢は、テトナちゃんに狙いをしぼった訳じゃないのでしょう。
盾で折った光の矢は全て消え去りました。これで私の周りが安全ですね。
シャリルさんが空間のスキルを使わないと、テトナちゃんを移動出来ませんし、お兄様みたいにお兄様の剣を私では扱えない。
その相手か使ったスキルを目で見ないと使えない。
テトナちゃんは妖精の子供たちの目を共有で見ることが出来て、お兄様の剣とも相性が良かったのに。
優しいテトナちゃんは妖精も逃がして、まったくしょうがない妖精ですね。
私がテトナちゃんから離れられないことを良いことに、シャリルさんと佐藤さんが作戦会議でしょうか。
コソコソと喋っています。
シャリルさんと佐藤さんは神器を持っている。神器を持っていたら神を相手にしているような物です。
シャリルさんは人に成り下がりましたけど、私の真眼のように空間の力がほんの僅かに残っているのかも知れません。
だから神性が残っていると信じている。
もうコソコソは終わったのか、シャリルさんが私を弓で狙っています。
光の矢を放ち、矢じりの先端から消えていきました。
シャリルさんに視線を飛ばすと、矢と一緒に消えていたのか、シャリルさんも佐藤さんも、いません。
私がどこから来るかと周囲を見渡していたら、盾が真っ先に反応して、真上に盾が飛んでいく。
両手斧を持った佐藤さんが弓で空間を飛んだのか、真上から両手斧を振り下ろしました。
盾がその一撃を防いでいます。
そしてシャリルさんを見つけました。
光の矢が私の周りを囲むように展開されて、シャリルさんが指を鳴らすと一斉に襲いかかって来ました。
光の矢は盾から出ている半透明のオーラで、私の周りに来ることはありません。
この隙にテトナちゃんを移動させないと。
空間のスキルは見た。テトナちゃんがココから居なくなれば本気で戦えます。
お兄様の剣はスキルを平等にする全能の剣。
私は世界樹の中にテトナちゃんを転移させることにしました。テトナちゃんの結界が掛かってても、テトナちゃんには反応しない。
テトナちゃんの胸に手を置くと足から転移させる。テトナちゃんと二人、世界樹のベットでお昼寝をした事がある、懐かしい記憶。
そのベットをイメージ。
『テトナちゃん、起きたら全部終わってますからね』
悪い夢は起きたら全部終わっています!
テトナちゃんの身体が全部消えた、早速本気を出そうと思……。
盾が戻って来て、シャリルさんに視線を移すと、佐藤さんがシャリルさんの横に。
そしてテトナちゃんがシャリルさんの足の下にいたのです。
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