第一章第四話〜第六話

第四話


 たこ焼きで空腹を満たした2人。

 引き続きノートのまとめに取り掛かる。


 年月日、時間毎に仮に並べていく幾つものノートの切れ端。ノート3冊分が切れ切れになり、ベッドに並べられている。


 「ちょっとおたずねしますがー。もしかして、これを片付けないと寝られないって事でしょうかぁ?」

 

 「寝るのはどこでも同じでしょ!とにかくまとめたら、……⁉︎ね、ねぇ雪村!これ、明日の日付なんだけど!」


 「どれどれー?AM3:00?しかも年月日の有る夢。今晩だ。……た、大変じゃん。凛!北海道、地震地震!」


 「それはいくら何でも防げないよ。今からどこにうったえるのよ雪村ぁ。」

 「うーん……確かになぁ……。SNSでつぶやいとく?」

 「つくば市も地震多いから、ここまで揺れるかも〜〜〜。」

 「なに、凛は地震苦手なん?」


 雪村は話しながらSNSには呟いたが、まもなくして心無いリツイートがチラホラ有ったのも事実である。


 「年が分かるノート、それ以外のノート。一応3冊分のノートまとめは何とか出来たね。今日以降で見た分は別ノートに書いとくよ。」

 凛は何か考え事でもしているのか、うわの空だった。


 「凛?今日はノートまとめてくれて、ありがとう。時間、遅くなってるから送ってくよ。」


 凛はまだうわの空だ。


 「凛?聞いてる?」


 「あ、ごめん雪村。私、今晩、泊まってく。」


 「はぁ?また俺は床で寝なきゃならんの?」


 「別に一緒に寝たっていいけど、でも3時までは起きてるから。雪村も起きてて。」


 「へ?凛、何言ってんの?」


 「だから3時までは起きてるって。時間になったら、雪村はTV点けてね。」


 「え〜〜〜。あと4時間有るしさ、仮眠しない?」


 「雪村は寝たら起きないでしょ!仮眠はダメーーー。」

 

 ノートに書き留めてる内容はこうだ。

(2035年5月20日AM3:00頃、北海道(場所不明)で地震。最高震度5強。5強の地域は山?市街では無いみたい。TVのニュースで、震源地付近で地滑りが発生したと報道している。その地滑りでふもとの集落が孤立してしまったが夜明けまで捜索出来ず。)


 「これが現実に起こったら、雪村のノート、信じるよ。」


 「SNSだけで良いかなぁ。リツイートに根拠は何だか聞いてくるけど、夢に出てきたからってリツイート返した……。誰も信じる訳ないけどね……。」


 「私もまだ今は信じてない。だから3時まで待つ。」


 「で、でも2時間位は仮眠してもー……。」


 「しょうがないから仮眠許す。2時間経ったら起こすからね。起きてくれなかったらっ飛ばしてでも起こすよ。私はシャワー借りる。雪村は寝ちゃっていいから。」


 凛に言われている間に寝てしまった雪村。あきれ顔の凛はシャワーをしに浴室に入った。



第五話


 シャワーを済ませて部屋に戻る凛。下着姿のままで、バスタオルで髪の毛を拭っている。


 ベッドにもたれる様に寝ている雪村。


 「こんなんだったら、お泊りグッズ持ってくれば良かったなぁ。雪村はドライヤー持ってないもん。……ま、バイトだけで1人で良く頑張ってるし仕方ないけどね。……疲れもまる、だから仮眠位はいいんだけどさ。」


雪村の様子を伺う凛。時間はAM1時近くなった。


「起きるのか?こいつは……。」

いびきを掻いて寝ている雪村。


 まとめ上げたノート3冊分。その内の1冊、同じ年月日のAM3時の所を開いてある。

 凛は繰り返し読んだ。

 「としが分かるヤツは必ず起こってる。赤いバッテンを信じればだけど。でも……ホントに起こる⁉︎……少し疑問だなぁ。」


 凛はインスタントコーヒーを飲む為、せまいキッチンで湯をかす。カップを雪村の分まで用意した。


 「雪村、そろそろ起きて。」

 雪村の身体をすって起こす凛。


 雪村は起きない。


 「ほらね。起きないんだよねー。」

 言いつつ腰の辺りを蹴っ飛ばし、強引に起こす作戦が始まった。


 「雪村、早く起きろー!」

 蹴っ飛ばされてニヤニヤしながらも、まだ寝ている。


 コーヒーを淹れにキッチンに立つ凛。


 「雪村―。起きろー。1時回ったー。」


 冷蔵庫から氷を1個取り出すと、雪村の口に押し込んだ。


 「げほっ。げほげほっ。」氷で冷たいのとむせ込んでしまったので目が覚めた。


 「やっと起きたか、寝坊助ねぼすけめっ。」


 「氷はないでしょ〜凛〜。」


 「最初私は、寝たら起きないから仮眠はダメって言ったでしょ?蹴っ飛ばしても起きないから氷突っ込んだ。目が覚めた?」


 「起きました……。」


 「はい。目覚めのコーヒー。もう1時半になるよ。」


 キッチンで顔を洗う雪村。タオルで顔を拭きながら戻ると、

 「3時かぁ。どうなるかなぁ……。」


 「今更心配してんの?雪村は赤いバッテン付けてた時、どんな心境だったのよ。」


 「ただ何となく。あぁ、また夢に出たヤツだ、ってね。……誰に話せばいいのか分からないし、キチガイ扱いされても嫌だし。」


 「まぁ誰に話すって言ったってね。雪村の気持ちは分かるよ。結果、このノート3冊分なんだし、雪村なりに悩んだんだろうな、とか。」


 残り1時間を切る頃、2人はスマホ片手にアプリで遊んでいた。


 「ねぇ凛。3時に何も無かったら……俺の事、どう思う?」


 「今までと変わりないよ。でも逆に、起こったらどうする?って感じだよ。」


 「ノートに並び変えて分かったんだけど、赤いチェックは連続してないんだよなぁ。ハズれも有るって事になるかなぁ……。」


 「ホントだねぇ。……私が気になるのは、赤いバッテンにはさまれてるヤツ。これだけ赤いチェックが多い中にチェック出来てないのが何故なんだろうって思う。としの入ってないのばっかりだけど、これも何かあるのかなぁ。」


 「うん。それ、多分だけど……、他の夢が飛び越して起こった時は、もう起こらないのかも……。俺の都合の良い言い訳。」


 「飛び越すわけ無いじゃん。最低月日は書いてあるんだし。……そーだね、都合の良い言い訳。雪村は今回ノートにまとめて、初めて気が付いたの?」


 「ま、まぁそんなとこ。だって夢を見る順番にホントに起こってる訳じゃないから、気にしなかったんだよ。チェックれだって有るはずだし。」


 「よく分析してみなきゃ。」


 アプリで遊びながら、あれこれ話している間に時間が近づいてきた。


 「雪村、もうすぐだよ。」


 「う、うん……。あ、TV点けとくよ。」


 深夜の番組が2、3局で放送している他は、放送が無くデジタル信号が無い様だ。


 凛はテーブルの上に時間が分かる様にスマホを置いた。


 AM3:00になった。……が、このアパート辺りに何も起こらなかった。


 「頃って書いてある以上、前後は有るよ。凛。」


 「そうね。それにここでは何も無くても、向こうでは起こっているかも。」


  2人が話している時、少しれた。

「雪村!地震来た。……3:04ね。」

「んぁ?少―し揺れたね。ここも。」


TVのテロップに地震発生の情報が流れた。

「雪村、TV、国営放送に変えて。」


 信号無しで真っ黒な画面だったのが、臨時ニュースを放送していた。

 「午前3時4分、北海道富良野ふらの付近を震源にした地震が発生しました。詳しい情報が入るまでお待ちください。」



第六話


 「雪村、マジ起きちゃったよ地震……。」


 「あぁ。起こった……。」


 TVでは繰り返し情報を伝えている。

 「最大震度5強という情報が入りました。震源は富良野西部。震源の深さは10km。各地の震度は情報が入り次第お伝えしていきます。先程、午前3時4分。北海道……」


 ノートを読み返す凛。


 「やっぱ起きるんだ……。雪村、どうしよう。」

 「どうしようって言われても……。地震を防ぐのは無理だよ。」


 「さっきの話だけど、たとえば今の地震の前に別の夢の内容が起こったら、この地震は起こらなかったのかなぁ。」


 「うーん、並べ替えたノートを見ると、そう言えるかもね。でも、年まで夢に出てきたのって、全部起こるんだ。」


ノートの内容が驚くほど一致している。……やはり夢の通りに起こってしまうのだ。


「雪村のこのノート。信じるよ。……さて、このノートによると、次は……。」


「凛も俺と同じ事してるよ。次はどの夢が出てくるのかなってさ。ま、今のノートは全部年月日時間毎に並び替えたから、分かり易い。年無いものも有ったけどさ。」


「直近の出来事は、来月の学園祭。2035年6月3日、出演を予定していたタレントが芸人に変更だって。それと、あと同じ日にもう一つ有るね。」


 隣に座りノートを覗く雪村。

 「ホントだ。2035年6月3日、こっちも年入りで書いてあるよ。時間はAM7:00。みらい平学園高校にパソコンメールで爆破予告。……だって。」


 「10日以上先かぁ。雪村が思うに、年月日の夢は起こったわけだから、この爆破予告は信憑性しんぴょうせいが有るんだね。」


 「多分、年まで入る夢ってなかなか見ないからさ。それに学園祭の方って毎年恒例だし、どっちも有りそう。」


 「実はさ、私の友達、学園祭実行委員で、その友達情報じゃ、今年の学園祭にサプライズでタレント呼んでるって話だよ。」


 「マ、マジで?……でも、学園祭の夢の内容はどうだろう。時間がずれて起きる事は有るんだけど……。学園祭の日かぁ…。別にどっちが起こってもいいやって感じだけど。」


 「何その投げやりな感じは!学校に爆破予告ってのは一体誰が犯人だろ……とか何か考えないの?」


 「それが、今まで1度も、起こるのかなぁなんて、感じた事が無かったんだ。……でも起こる事に変わりは無いと分かると怖いよね。まぁ、それで凛に話したんだけどさー。」

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